喧嘩屋斬左VS流浪人
「それより大丈夫かよ?」
「ん?」
「見ろよあいつの得物、あの長さはどう見ても”槍”だぜ。槍に剣で立ち向かうには
相手の三倍の力量いるって話だぜ。」
「槍じゃねーよボーズ。こいつはもっといいモンよ。」
振り返った左之助の言葉に、弥彦は唸った。多分、槍よりもいいもので、長い武器
を考えているのだろう。
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河川敷にやってきて、距離を開けてと喧嘩屋は立った。
辺りには何もない。人もいない。絶好の喧嘩場所だろう。
遠くからを見守る薫と弥彦に、喧嘩屋側にいる比留間兄弟。
「そういやお互い自己紹介がまだだったな。」
とはいっても、喧嘩屋のほうはのほうを大体知っているのだが。
「俺は「相楽左之助。」裏社会での通称は「斬左」だ。」
ビリッと武器に巻きつけていたものを外していく。徐々に露になっていくその姿。
そして全貌が明らかになったとき、左之助が再び口を開いた。
「斬馬刀の左之助。略して「斬左」だ。」
「斬馬刀…!」
薫が斬馬刀を見て唖然とする。弥彦はあまりの大きさに呆然としている。
「これが話に聞く斬左の”相棒”か…」
「応仁の乱の頃の骨董品で全然手入れしてねえからな。斬馬刀っていっても切れ味はないに等しい
だが叩き潰すことは可能だぜ。」
「流浪人、神山。この逆刃刀で相手する。」
逆刃刀を抜き、構える。
「なんていっても、君のことだ。既に調べてるだろうがな。」
「ああ、だから一言忠告だ。不殺なんて甘い考えは捨てちまいな。さもないと―――」
「死んじまうぜ!!」
言葉と共に左之助が駆け出した。あんな重いものを持っているのに、感心してしまうほどの
足の速さだ。はじっと相手を見据え、構えたままでいる。
「うらぁ!」
斬馬刀が振り下ろされると同時に跳ぶ。柄が真っ二つに割れた。
は回り込み、思いっきり脇腹に切り込んだ。
凄い音を立てて左之助が吹っ飛び、地面に突っ込んだ。砂煙が上がり辺りが見えなくなる。
静寂が包み込み、やがて弥彦が笑みを浮かべた。
「そうだぜ、いくら奴の斬馬刀が強くたって当たらなければ無意味、の圧勝…!」
と、そこまで言って砂煙の中で何かが動くのが感じ取れた。
「流石に強いな。伝説になるわけだ。だがよ…」
何事もなかったかのようにムクリと起き上がり、例の笑みを浮かべた。
そこで薫は気づいた。彼の強さは、怪力でも、斬馬刀の強さでもなく、打たれ強さ。
つまり、今まで一撃で敵を倒してきたの飛天御剣流。その一撃は彼には通用しない。
「喧嘩ってのは真剣の切りあいと違って、剣に強いもんが勝つんじゃねえ。倒れねえものの勝ちなのよ」
「そんな台詞は、最後まで立っていられたときに言うんだな。」
互いににらみ合い、静寂が続いた。