「おはよう、
「ん・・・」

扉が開く音と共に、足音がこの部屋の静寂を断ち切る。は目を覚まし、上体を起こす。
そこには、既に起きていたが、戦闘用の愛剣を装備して笑顔で佇んでいる。

「今日は一緒に朝ごはん食べれないから。」
「え・・・なんで?」
「修行所にいってくるの。じゃあ、いってくるね」

手をひらひら振りながら笑顔での部屋を出て行った。
寝起きのは、小さく返事をすると、また眠りについた。
















愛を確かめるアフタヌーンティー









「じゃあ、ヘルムート、いこっ!」
「ああ、いこう」

美青年と二人で、はにこにこと修行所へ歩き出した。
ヘルムートの顔が、緩みっぱなしの顔なのは気のせいということにしておこう。

「だが、から誘うとは珍しいな」

えれべーたーに入ったとき、ヘルムートが嬉しそうに言うと、は「まぁね」と答えた。
その返事を聞いたヘルムートは、閉まりつつあるえれべーたーの扉を見ながらまた尋ねる。

「あ、あの。」
「ん?」
「何故私を誘ったんだ・・・?」
「そりゃぁ、ヘルムートと修行したかったからだよ。」
様ではなく?」
「うん!」

笑顔の絶えないが、天真爛漫の笑みでヘルムートに答える。その笑顔に真っ赤になる純情少年。
余程色恋沙汰には無縁の人生を歩んできたのだろうか。
やがてえれべーたーが第五甲板に着き、を先頭に修行所に歩き出した。

「ラインホルトさーん」
「あ、ちゃんじゃないか!今日もきてくれたのか。」

まるで、孫を可愛がるおじいちゃんのような顔で、ラインホルトがの訪問を歓迎した。
ラインホルトの新たな一面を、ヘルムートは冷めた目で見つめる。

「そうなの。じゃあ、よろしくね」
「わかった。今日は二人でいいんだな」
「うん。」

今日は、ということは昨日も修行所に来たのだろうか。では、誰と・・・。
ヘルムートに謎ができあがる。それに気づいていないは、張り切って身体を
解している。それに続いて、彼も身体を解し始めた。

「じゃあ、ヘルムート、頑張ろうっ!」
「おう!」







修行所での結果は、五回戦目で惜しくも敗北。は惜しかったなー。と唇を尖らして呟くが
帰るときは笑顔で、またきます!とヘルムートと爽やかに去っていった。

+++

その後、三人は朝食をとりに向かった。朝一の修行後の朝食はうまいだろうなぁ。とヘルムートが
嬉々として語っていたり、朝食の後はどうするんだ?もしよかったら・・・。とを誘ったりと
なかなかの珍道中であった。因みに、結果は見事に玉砕したとか。



「あっちの方が微妙に強かったね。だから負けちゃったんだと思う。あと、回復が追いつかなかったのも
 あるかも・・・ごめんなさい。」

負けたことを咎めるわけでもなく、責めるわけでもなく、は今回の修行所での反省点を述べた。

「いや、俺たちの力不足もあるさ。」

好感度アップのためか、はたまた純粋に慰めるためなのか。ヘルムートが冷水を飲み答えた。
それ対して、「ありがとう」と穏やかには答えた。

「それより、なんで突然修行なんて始めたんだ?」

唐突にヘルムートが尋ねる。その声に、誰が見ても分かるほどがビクッと震えた。
何かヘンなことでも言ったか!?とヘルムートが困惑するのをよそに、が「んーと・・・」
と言葉を濁すが、口を割った。

「強く・・・なりたくて」
「え?」
「皆の足引っ張らないように、頑張るの」

胸が締め付けられる。の一言一言が、ヘルムートの胸を締め付けた。
なんて健気な子なんだ・・・!ヘルムートはに心酔した。

「だが、。キミは強いだろう?なのに何故・・・」
「でも、そんなの並みの上くらいなんだよ。こんなんじゃ、誰も護れないの。だから、もっと強くなるんだ」

強い意志を秘めた瞳を、真っ直ぐヘルムートに向ける。
ヘルムートもそれに応えるように真剣に見つめる。









「なっ・・・」

EverFree軍のリーダー。優しく温厚、人望も厚い、まさにリーダーになる素質を持ち合わせている彼。
は、朝食をとりにやってきた。そして、より先にいた愛する人を見て愕然とした。
彼女笑っていた。誰もが見惚れる彼女の笑顔は、今のもの。そして普段ならその笑顔に癒されていた。
その笑顔のためにがんばっている、といっても過言ではないのに。

それなのに

今、その笑顔が向けられている先はヘルムート。
また、ヘルムートも微笑み返していて、とってもいい雰囲気。

「どういう・・・ことだ」

の顔が、絶望から怒りに変わっていった。
何故、彼女は僕ではない誰かに微笑んでいるんだ?

・・・」

愛する人の名を囁くように呼ぶが、当然のように反応してくれない。
でも仕方のないこと。彼女とは結構な距離がある。

「君の心は・・・もう・・・」

今度は真剣に見つめあっている。ああ、さっきよりもとってもいい雰囲気じゃないか。
自嘲気味に笑い、彼らの様子をじっと見つめる。

運命だと思ったのに。時代が違う僕らの出逢いは運命だと思ったのに。
でも、彼女は僕に会うためにここにきたのではないんだね。

別の・・・誰かに・・・






「あたしは」
「ん」

一度目を伏せて、そしてもう再度ヘルムートと視線を合わせる。
ヘルムートは彼女の顔を見て驚いた。滅多なことがない限り泣かないが、目尻に涙をためている。

「前にね、に、絶体絶命の危機を救ってもらったことがあるの。」

ついに収まりきらなく名なった涙が頬を伝い、それと同時にヘルムートの胸に縋るように顔を埋めた。
ヘルムートは黙っての事を抱きしめ、背中を撫でる。
心臓がバクバクと煩い。これ―――――に聞こえてるのかな。

「ヘルムート、心臓が凄いことになってるね」
「えっ・・・!」

聞こえてた!!普段はポーカーフェイスであまり動揺などを表さないヘルムートだが、今回ばかりは
無理だった。一度チラリとヘルムートを見たは、くす・・・と笑みをこぼす。

「あたしを庇って、が血を流したの。痛いはずなのに、は笑顔で「大丈夫?」って聞いてきたの」

そのときを思い出したのだろう。が再び小刻みに震え始める。

「それから直ぐ、ハーヴェイとかがそのモンスターを一気に薙ぎ倒して、直ぐに病室に向かったの。」

ヘルムートの服を掴む手の力が強まった。そのときヘルムートは感じた。
は・・・やっぱり・・・

は無事で、本当によかった・・・。でも
 強くならなきゃ。二度とこんなこと起こらないようにしなくちゃって。強く思ったの」

の事を、誰よりも愛している。
俺なんか、入る余地なんてないんだ。

「だから、強くなるの。強くなって・・・今度はあたしがを護るの。大事な・・・大事な人だから」