が、涙をためてヘルムートに抱きつくようにしがみついた。
ヘルムートは困惑しながらも、を抱き返している。その姿が恋人のようで・・・

僕の心は絶望に呑みこまれた。

何で、どうしては僕じゃなくてヘルムートに抱きつくの?
わからないよ、僕には―――――キミがわからない。

僕は次の瞬間にはその場から逃れるように駆け出していた。















愛を確かめるアフタヌーンティー









「そ・・・っか」

の話を聞き終えたヘルムートは、顔を上げたの目にたまっている涙を拭った。
ありがとう、と消え入りそうな声でお礼を述べるだが、まだその顔は曇っている。



ヘルムートは、の頬に手を当てて、自分に向ける。

「キミは笑っていた方がいい」
「・・・・うん!」

やっと、の顔に太陽が戻ってきた。はヘルムートの手に自分の手を重ねると、「ありがとう」
と呟き、ヘルムートの頬にキスを施した。
突然の事に吃驚したヘルムートは、唖然とした表情でを見る。はなんてことない顔をして
「じゃあね」と言い席を立ち部屋へ戻り始める。

「い、今・・・・」

先ほどの感触を確かめるように、頬に手を添えると、一部潤っている部分があった。
その潤いを触ったと同時に、頬が一気に上気した。

!!!」

席を立ち、大声でを呼び止める。は振り返ると、首を傾げて次の言葉を待った。

「い、今の・・・」
「感謝の印だよ!」

にっ、と笑うと、は踵を返し歩き出した。


+++


?入るよ」

の部屋に行ったは、いつもどおりの笑顔での部屋へ入っていった。
部屋の主はベッドに寝そべっていて、はそれを見ると、頬を膨らます。

「もうっ、まだ寝てたの?」

起きなきゃダメだよ。とを揺り起こそうとに触れると、がその手を拒むように
身を捩った。そして、を目を合わせる。の目は、酷く鋭くて、思わずは言葉を失った。

怒ってる・・・?

「あ、あの・・・?」
「・・・よせよ」
「え?」

の口から、小さくだがへの怒りを押し込めた言葉が発せられた。
ワケが分からず、はそのまま黙っていると、が上体を起こす。
再びむけられた視線は、泣きたくなるほど怖かった。まるで、自分を拒絶しているような視線・・・。

「キミは、ヘルムートが好きなんだろう。だったら、僕に優しくしないでくれ」
「何で!?違うよ、あたし、ヘルムートは別に・・・」
「僕見たんだよ、キミとヘルムートが抱き合っている所を・・・」

まさか、あのときを・・・。なんて間が悪いのだろう。は顔を顰める。
彼は誤解しているのだ。一刻も早く誤解を解かねばいけない。大変なことになる。

「運命の人だと思ったのに・・・もう、僕とは深く関わらないでくれるかな」

はっきりと発せられた、拒絶の言葉。
その言葉に、の目から一筋の涙が零れ落ちた。
はそれを拭き取ろうともせず、踵を返し、の部屋から出て行った。

最後までの事を名で呼ぶことはなかった。




(泣きたいのは・・・僕だって同じなのに)

もう一度ベッドに身を預け、枕に顔を埋める。先ほどから自分の頭を支配するのは、彼女の泣き顔。
だが、これで彼女も自由になれたんだ。これでいいんじゃないか。

そう自分に言い聞かせる。

でも――――――

「この気持ちは何なんだ・・・」

ポツリ呟いた呟きは誰にも聞かれることはなかった。





「ヘル・・・ムート!!!」
「!?、どうしたんだ!?」

の部屋を出て直ぐ、ヘルムートと遭遇した。はヘルムートを見つけると、
すぐさま彼の懐へ飛び込んだ。

に・・・嫌われちゃったぁ・・・」

それだけ言うと、まるで感情をコントロールできない小さい子供のように大声で泣き出した。
何があったのだろう。ヘルムートは眉を顰めての部屋へと繋がる扉を見つめる。
そりゃぁ、自分の想い人がフリーになるのは大歓迎だ。

だが、それ以上に
自分の想い人が幸せじゃないのは、いただけない事だ。

「何で嫌われたんだ、思い当たる節は・・・?」

自分でも、相当なバカだってことはいい加減分かっている。でも、放っておけない。
それに、彼女の幸せに必要なのはほかでもないだ。

「あの・・・さっきのシーンを見られたの・・・」

さっきのというと、が泣いていた所か。あそこを見られたのは相当痛い。
ヘルムートは唸り、何かいい案はないかと意味もなく見わたす。

「あ」
「・・え?」
「私が誤解といてくる」

ヘルムートがから離れ、単身での部屋に乗り込む。それをは黙って見つめていた。
自分がいってはややこしくなる。そう思ったから。

・・・・」

大好きなのに。愛してるのに。どうして・・・?