雨音は優しいラプソディー





手を繋いだら、離れないの?しがみついたら、遠くへ行かないの?
そうじゃないよね。知ってるんだ。私だって”別れ”って言う単語知ってるもん。
手を繋いだって、しがみついたって、離れて、遠くへ行ってしまうんでしょ。
別れが思いよりも先に来なかったことなんて一度もないんだ。いつだって先駆けてやってくるの。


あのころ、まだ二人が一緒に歩んでいったとき。とても幸せだった。
だって、いつでもあなたが隣に居てくれたんだもん。
忙しくても、リオンに咎められても、いつでも毎日会いにきてくれた。

一回だけ、帰らないでってせがんだときもあったね。そのとき、あなたは驚いたように「いいの?」って言ってきた。
わがままな私のわがままに付き合ってくれてありがとね。一緒に寝てくれて嬉しかったよ。朝起きたら、隣にあなたがいるの。それってとても幸運なことなのよ。じっとあなたの寝顔を見てたら、急に目が開いて「やっぱり」ってあなたが呟いて、私はドキッと胸が締め付けられたの。だって突然目が開いたのよ、びっくりするじゃない。そしたらあなたは「起きてたんだね、視線感じた。」って優しく笑って私の頭をゆっくりゆっくり撫でてくれたんだよね。あのときの笑顔と、頭を撫でる感触が今でも忘れられない。

そういえば前、雨が降る中デートしたことがあったよね。私雨って嫌いだったけど、あなたと歩いたあのときの雨だけは好きだったの。だって、雨音が優しかったのよ?片手に傘を持ったあなたの腕に絡み付いて「これで離れられないね。」って冗談っぽく言ったら、あなたは「離れるわけないよ。」って優しく言ってくれたね。「ねえ、もし離れたらどうする?」私が意地悪く訪ねると、「勿論、迎えに行く。あるいは、追うよ。」あなたは微笑んだ。
雨音よりも優しくて、お菓子よりも甘くて、その言葉が一日中頭から離れなくてその日寝れなかったんだから。

そしてあなたがいなくなった。ゴドウィンの奇襲にあって、太陽宮を逃げ出して今ではお尋ね者。
いつかあの雨の日にいってくれたみたいに迎えに来てくれるのかな?それとも、私があなたを追うべきなのかな?


今日はあの日と同じ雨の日。でも、雨音は優しくなくて、隣にあなたはいないの。