こんな暑い日、こんな熱い君




訓練場の近くと言うのは、なんだかとても楽しい。は訓練風景を見て目を細めた。
何かに一生懸命になる姿と言うものは、見るものをひきつける。
特に真っ赤な服を着た、茶色の髪の毛の彼は人一倍一生懸命で、大分目立つ。
今は休憩中なのか、周りは日陰で汗を拭っているが、彼だけは熱心に熱心にやっている。

「幸村さまぁ〜」

妙に間延びした感じだが、これが素なのだから仕方ない。
呼ばれた幸村は、凄い速さで振り返り、「姫!?」と慌てて駆け寄ってきた。

「おはようございます。良すぎるお天気ですが…倒れないように気を付けてくださいませ。」
「そ、某の事を心配してくださっているのでござるか!?か、感激…!身に余る光栄でござる!」

そういって照れ笑いを浮かべた幸村につられて、もくすくすと笑った。
よく顔を覗きこむと、汗が滴っている。目に入ったら沁みるだろうな、と思いはハンカチを
取り出して、汗を拭こうと顔と手を近づける。幸村の顔が真っ赤になって「なんでごじゃるか!?」
とか言っている。噛んじゃってる。

「じっとしててくださいね…。」

が囁くと、硬直してぎゅっと瞳を瞑った。顔が益々赤くなっている。
何で赤くなってるのかしら?と疑問に思うが、はせっせと汗を拭う。
凄い量の汗だ。でもこの炎天下では無理もないと思う。

「はい、できました!」
「え…何をでござるか?」
「汗を拭かせてもらいました。…ご迷惑でした?」
「とととととんでもない!本当にかたじけない!」

そうですか、と笑ったの顔が眩しくて、幸村は俯いた。
バクバクと煩い心臓。し、しずまってくれ!煩すぎて、姫に聞かれてしまいそうだ。

「幸村様?お顔が赤いですよ?もしや日射病にでも…?」
「そそそそんなことないでござる!某いつもどおりでござるよ!」

首を傾げて心配そうな顔をするに、幸村は益々赤くなっていく。
姫〜!お顔が近うございまする!
頭がボゥっとしてきた。血液が大氾濫しそうだ。やがてぐらぐらと世界が回る。ぐらぐら、ぐらぐら。
次の瞬間幸村は、の目の前で倒れた。



「幸村様!?」

突然の出来事に、が慌てふためく。どうしましょう、本当に日射病!?
とにかく、誰かに医務室へ運んでもらわないと…!近くに居た兵を呼び、急いで医務室へ向かった。



ン…?
うっすら目を開くと、天井がある。下半身辺りに妙な違和感を感じて下を見ると、

「うっあああああぁぁわぁひゃあ!」

思わず飛び起きそうになった。なんと、下半身の丁度性別を見分けるのにピッタリなところに
麗しの姫が寝そべっていた。顔が真っ赤になった。神経がそこへ集中してしまう。
姫、早く起きてくだされ!幸村は心の中で悲願する。このままでは危険だ。止まらない。
幸村だって、好きな女性が自分の男に寝そべられたら堪らない。

「姫ぇ!!!!!」
「ん…幸村様?おはようございます、お元気になりましたか?」

目をごしごし擦って微笑まれたが、その場から起き上がってくれない。

「姫、まことに申し上げにくいでござるが…そこからどいていただけないでござるか?」

顔を隠して訴えると、姫の悲鳴が聞こえて、「ごめんなさい!」と謝られた。
危なかった、もう少しで理性と言う壁が崩壊する所だった。

「あのあの、幸村様…?」
「なんでござるか?」
は幸村様が倒れられたとき本当に心配しました。」
「…かたじけない。」
「これからは自分に無理しないでくださいね、との約束です。」

そういって、細く白い小指が出された。指きりげんまん…。とか言う奴だろう。
小さい頃よくやった。と幸村は遠く思い出した。
それよりも、愛しの姫と指きり…。こんな嬉しいこと、もうできないかもしれない。
恥かしさなんて無視して、死ぬまでの一生の思い出のために幸村もその小指に自信を絡めた。

「ゆびきりげんまん、嘘ついたら…。」

そこで黙り込み、うーん。と可愛らしく唸る。

「嘘ついたら、をお嫁に貰ってもらいます!」

パァッと花のような笑顔で言うが眩しくて、幸村はその場で気を失った。

(可愛すぎでござる、ひ…め………)
太陽がさんさんと降り注ぎ、花たちが太陽に向かい咲いている暑い日の出来事だった。