Brand New Morning
-フェアリーとの出会い-





早速は滝の洞窟へ向かった。聖都ウェンデルへは滝の洞窟からいけるのだ。
兄のフレイルを腰に携え、自分のフレイルを持って、襲いくるモンスターを返り討ちにした。

やがて滝の洞窟の近くへやってきて、小さな女の子が滝の洞窟の前にいるのが見えた。
こんな夜にどうしたのかしら、とは急いで駆け寄る。

「どうしたの?」
「うう…。めにみえないちからのせいで、はいることができないでち。」

ハッ!しまった!!
はすっかり忘れていた。今、聖都ウェンデルへの交通手段である滝の洞窟は、生憎外部からの
侵入を防ぐために結界がはられているのだった。それもこれも、最近ビーストキングダム軍が
不穏な動きをしているからだ。城塞都市ジャドが占領されたと言う噂も聞いた。

「あなたも聖都ウェンデルへ行くの?」
「うん!!」

あどけない顔に、くりくりとした愛らしい金髪。身長、口調からすると8〜10だろう。
こんな幼い子供がこんなところに夜いるのは危険だと思い、は少し屈みこんで提案する。

「私もウェンデルへ行こうと思ってるんだけど、どうかな?一緒に行かない?」
「ほんとでちか!いくいく!」

子供の反応に満足そうに頷く。

「私、近くの村に住んでるんだけど、そこに宿がとってあるから、そこで今日は休もう?」
「はーい」

なんで住んでるのに宿をとってあるの?なんて野暮な質問は子供からは出てこなかった。
少しホッとしつつも、アストリアへ向かって歩き出した。

「お嬢ちゃんお名前は?」
「シャルロットでち。おねーちゃんは?」
よ。16歳。」
「ほえー、じゃああたちのいっこうえでちね。」
「…ん?」

笑顔を崩さずに、尋ねる。今、このお嬢ちゃんは自分の年齢をの一つ下と言った。
この少女は、私が6歳と勘違いしたのかしら、と無理矢理思い、「5歳?」と聞く。

「し、しつれーでちね!15でち!」
「ほええええ!?マジですか!マジなんですか!?」

こんな幼い少女が15と、最近の子供の発育は遅れているのかしら。

「わかったわ。シャルロットって呼んでいいかな?」
「うん、あたちもしゃんって呼ぶ!」



アストリアについた二人は、宿屋へ向かい、主人に客が一人増えたと言うことを告げてベッドへ座った。
そこで、少し思案に耽る。確かに謎の男が言ったとおり、兄の能力は私に備わった。
だが、それはあくまで兄の能力だ。は、兄の能力なんだからそう簡単に自分が使ってはいけない、と考え、
その能力は極力使わないようにした。変わりに、三節棍を武器にしてみようと考える。
小さい頃、少し嗜んだ武器だ。服も変えなければ。血塗れたままでは何かと不都合だ。

聖都ウェンデルへ向かうためには、村の東にある滝の洞窟を通っていけばいいのだが、
どうしよう、と考える。だが、思い浮かぶわけもない。結界をはっているのはウェンデル側なのだから。
どうもいいアイディアが浮かんでこない。外の空気を吸って気分転換をしようと考えた。そのときだ

「あの…」

躊躇いがちに声をかけられて、は目を見開く。長い金髪に、翡翠色した瞳。このような女性を、美人と言うのだろう。
でもまだ少女のあどけなさが残る顔。そこに宿る悲しみ。この人は何か辛い過去がある、とは直感的に感じた。

「行方不明の弟を探してるんです。金髪の、これぐらいの男の子、見ませんでしたか?エリオットって言うんです…。」
「…すみません。ここらへんにはいないと思います。聖都ウェンデルへ向かおうと思っているんですが、もしそこに
 いたら、私が保護しておきます。」
「!?あなたもウェンデルへ行くのですか?私もそこへ向かってるんです。あの、よかったらご一緒して宜しいですか?」
「はい、勿論ですよ。シャルロット、いいよね?」
「いいでちよ!」
「私はリース。ローラントのアマゾネス、リースです。16歳です。」
「湖畔アストリアの、見習い聖者。私も同じく16歳だよ。ってわけで、敬語はやめよ?」
「シャルロットはシャルロットでち!15さいのかれんなびしょうじょでち!」

こうして、リースの同行も決まった。
そのときだ。眩い光が窓から溢れた。朝よりも明るいほどの光に、思わず目を瞑る。

「あれは…」
「いってみまちょう!」

シャルロットが言うが否や目にも留まらぬスピードで宿をでていき、慌てても待って!と追いかけた。
リースもシャルロットとの後を追って宿を出た。
光はラビの森へ行った、と誰かが口にしていた。村にいる両親に見つかってはいけないので、足早にラビの森
へ向かった。



暫くラビの森を彷徨った。徐々に光が輝きを失って、進むスピードも遅くなっていき、とうとう光が輝きを失った。
すると、地面に何かが落ちた。とシャルロットとリースはそれぞれ目をあわせて頷くと、駆け寄った。

「大丈夫?しっかりして!」
「う…はぁはぁ…もう大丈夫。私はフェアリー。あなたは?」

見れば、人の大きさではない小さな女の子が、裸で、しかも背中に羽根をつけていた。
少し驚いたが、この世界は色んな生物が共生しているのだから、こんな生物がいても不思議ではない。

「私は、湖畔の村アストリアの聖者見習いよ。」

後ろではシャルロットとリースが興味深そうに眺めている。二人もこんな生物見たことないのだろう。

「…。このさいしょうがないわね、よし、あなたに決めた!」
「え?」
「ううん、こっちの話。…ねえ、お願い!私をウェンデルの光の司祭様のところに連れて行って!
 私にはもうこれ以上飛ぶ力が残ってないの。」
「私たちもウェンデルへ行く所だからいいけど、あそこは結界がはられてて通れないの。」
「それは、私がいればたぶん大丈夫。さぁ、急いで!マナの聖域に異変が起こっているの…」

とても急いだ様子の女の子に諭されて、は頷く。
刹那
アストリアの方面から、凄まじい轟音が響いた。緊迫した空気になる。音からしてただごとではない。

「アストリアの方面だ…急いで戻ろう!」
「私はあなたの中に入りこんで休ませてもらうね。しばらく姿が見えなくなるけど、心配しないで…」
「は!?ちょ、え!?」

すると本当にフェアリーはの中に入り込んだ。何がどうなっているのやら。

『ほら、早く!』
「んぎゃ!頭に声が響く…変な感じ。」

どうやらシャルロットとリースには聞こえてこないらしく、きょとんとした顔をしている。
は急ごう、と言ってアストリアへ向かった。