Brand New Morning
-新たな仲間たち-





アストリアへきた三人は、唖然とした。アストリアが、跡形もなく何者かによって壊されていた。
人っ子一人居ない。となると、両親も…もう、いないだろう。弾かれたように自分の家があったところへ向かった。
辺りに散らかる家の破片、人々の死骸。見知った顔ばかりが倒れていて、の胸は痛んだ。
一体誰がこんなことを…!その思いに答えるように、フェアリーが『ビースト兵に襲われたようね…。』と小さく言った。
城塞都市ジャドの次は、湖畔アストリア。着々と聖都ウェンデルへの侵攻が進められている。

家の跡地には、壊れた家があった。破片や家がこれ以上壊れないように気をつけつつ、壊れた家へ入っていった。
中には、何かに怯えた表情をした母、父の死体があった。母や父の事はあまり好きではなかったが、死んでしまうと
なると悲しさがこみ上げてくる。

「うっう…お母さん…お父さん…。」

涙が溢れてきた。の身内であった母や父はもういない。そして、兄も。これでは一人になった。
今はシャルロットやリースがいるが、聖都ウェンデルまでの仲間。いつかは別れるんだ。
果たして、本当に兄の魂を取り戻せるのか。急に不安になってきた。

『元気出して…。』

フェアリーの慰めに頷きつつも、兄であるロビンはどうしているだろう。と考えた。
だが、ロビンはアストリアが襲われる前から…死んでしまった。だから、獣人もまさか死体に手をかけるような
真似はしないだろう。そう信じて、はシャルロットとリースのもとへと戻っていった。

「…さん。」
。げんきだすでち。」

気遣い気な二人に、「うん。」とだけ答えて、アストリアを出て行く。慌てて二人もついていく。

「聖都ウェンデルが危ないよ、早く滝の洞窟いこっか…。」

両親の愛情は常に双子の兄であるロビンに注がれてきた。だから、愛情なんてものはよくわからない。
その母、父が今日この日、両親が死んでしまった。両親から愛情を貰わなくて良かった、と少し思った。
悲しみが少なくなるからだ。は一日で身内を全員失ってしまった。唯一愛した兄さえも。



シャルロットとリースは変に話しかけるのもなんだと思って、に話しかけてこない。
も話す気にはなれなかったので、気にはならなかったが。
滝の洞窟へつくと、二つの人影があった。どちらもきっと、結界に梃子摺っているのだろう。
大分悲しみも収まってきたは、気まずい雰囲気ではあったが、シャルロットとリースに話しかける。

「あの人たちもウェンデルへ向かうのかしら?」
「…あ、そうでしょうね。」
「はなしかけてみるでち!」

シャルロットがいち早く二人の許へと向かった。

「どちたの?」
「聖都ウェンデルへ行きたいんだがな、滝の洞窟へ入れないんだ。」
「私も、ウェンデルへ行きたいの。」
「それならフェアリーが結界をといてくれますから、一緒に行きましょう。」
「そいつぁいい!よろしくな。ところで、どうしてウェンデルへ向かってるんだ?」
「私は…。」

は、自分の素性を話した。
謎の男の誘惑に乗って、自分が間接的に兄を殺してしまったこと。兄の能力を自分のものになったこと。
そしてその謎の男によって兄の魂が持っていかれたこと。先ほどのアストリアに惨劇で両親を失ったこと。
ウェンデルへは、兄の魂を奪還する方法を司祭に尋ねるために向かっていること。
総て話し終えるとデュランが顔をゆがめて謝った。

「変なこと聞いたな。」
「いいえ。隠していくのも変な話ですもん。」
「…それじゃあ、私も話します。」

続いてリースが語る。
リースは、難攻不落と名の高いローラントの王女であり、アマゾネスのリーダーである。
しかし、ナバール軍によってローラントが制圧されたこと。弟が攫われてしまった。
国の復興について、そして弟の行方を知るために、司祭を尋ねにウェンデルへ向かっている。と言うこと。

「まさか王女だとは…。」
「ふふ、見えないでしょ?」

そして次にシャルロット。
シャルロットは、大好きな神官ヒースが湖畔の村アストリアに向かうことになり、嫌な予感がして
自分も向かったのだが、ヒースは謎の男によって攫われてしまった。そのことを司祭に報告すべく、向かっているらしい。
それからなんと、驚いたことにシャルロットは司祭の孫らしい。

男の名前はデュラン。フォルセナのファイター。
彼は、剣術しか能がない。だが、ある日魔法の前に敗れ去った。だから、もっと強くなろうと決め
クラスチェンジをするべく、ウェンデルへ向かっているらしい。

「その魔導師って、ウチの紅蓮の魔導師じゃない?」
「!!ヤツを知っているのか!?」
「そりゃそうよ、こう見えても私、魔法王国アルテナの王女なのよ!でも、勘違いしないでね。
 私は国を負われた身。あんなヤツ、大っ嫌い!」

アンジェラは、自分の母が、アンジェラの命と引き換えに古代魔法でマナストーンのエネルギーをコントロール
しようとしたらしい。それからあとのことは覚えていなくて、気づくと城の外に倒れていたらしい。
それから雪原を彷徨い、エルランドの町で占い師からウェンデルの事を聞き、やってきたわけだ。

「教えてくれ、紅蓮の魔導師は一体何者だ?」
「前は私と同じで魔法がてんで駄目だったんだけど、ある日いきなりアルテナ一の魔法使いになっちゃったのよ。
 今じゃお母様の右腕として大イバリ!王女の私を「アンジェラ!」なんて呼び捨てよ?もう思い出しても腹が立つ!」
「アルテナ一の魔法使い…。俺もフォルセナ一の剣士だった男の息子。負けるわけにはいかない。」

それぞれの素性がわかったところで、聖都ウェンデルへ向かうべく、フェアリーが結界をといた後、滝の洞窟へ
入っていった。