どうしようどうしようどうしよう――――
は酷く焦っていた。頭を抱えて、顔を青くしている。
ここはどこ!?ここはパオズ山!?君は誰!?君は孫悟空!?
そんな、そんな――――。自問自答して更に顔を青くする。




いらっしゃいませ異世界へ。




「どうしたんだよ、そんな顔青くして」

悟空がの顔色を見て首を傾げる。
は悟空に心配をかけないように、なんでもないですー。と乾いた笑いを浮かべた。
そんなわけがあるのか、いや。今自分が置かれている状況を考えれば、あるのかもしれない。
それでもまだ、今の状況を認められない自分が居た。

「もう一度聞くけど、ここはパオズ山?」
「そうだぞ!おめぇ変な奴だなぁー」

この男の子が嘘をついているとは思えない。この笑顔は、嘘をついたことのない純粋な笑顔。
は泣きたくなった。誰か、誰か嘘だと言って!

「おめぇどっからきたんだ?」
「えっと、日本・・・です。」
「ニホン?聞いたことねぇなぁ。」

ここらへんで、ようやくは今の状況を認め始めた。
この世界は・・・きっと、DBの世界。まだ仮定であるが、そう仮定すると色々と辻褄が合う。
だが、こんなことが現実にありえていいのだろうか・・・。

「困ったなぁ・・・。」
「おめぇ困ってんのか?だったら、オラん家こいよ!」

突然の申し出に、一拍遅れては「いいの?」と尋ねる。
全く何もかもが判らない土地での、悟空の申し出はにとって涙物だった。
突如あふれ出た涙に、くしゃくしゃになった顔。はこのとき、この世界に来て初めて涙を流した。

「ご・・・っ、くう君!ありがと・・・!」

安心感からか、これからへの不安からか、よくわからないが。とりあえず止まらない涙を
乱暴に拭い、悟空へ笑顔を向ける。悟空は、突然泣き出したに困った顔をしていたが
の笑顔を見て、笑顔を取り戻した。

「変な奴だなぁ。突然泣き出して、女ってのは皆そんなもんなのか?」
「ううん、そんなことはないですよ?人にはそれぞれ個性がありますから。」
「そうなのか?」
「ええ、悟空君と私は、性別以前に人間が違うでしょう?だから、必然と性格も違うんです。」
「ほへぇー。おめぇ頭いいな!それにしても、変なしゃべりかたしてんな!あと、オラの事は悟空でいいぞ!」

変なしゃべり方って言うのは、敬語の事を指すのだろう。
は悟空の好意に甘えて、呼び捨てで呼ぶことにした。それから、敬語もやめる。

「じゃあ、私の事もって呼んでね。」
「おーわかった!じゃあ、オラん家いくか!」

その一言で、悟空の家へ向かうことが決まった。


「ところで、悟空はいくつ?」
「オラか?オラは14だぞ!」
「そうなの?じゃあ、私と同い年ね。私も14よ。」

道の途中、は悟空の年齢を尋ねる。実は、悟空についてあまりよく知らない。
するとどうだ、なんと、悟空はと同い年であった。思わぬ共通点には顔を綻ばせる。

「14歳にしてはちょっぴり背が小さいね。でも、そのうち伸びるよ!」
「おぉ!オラそのうちよりでっかくなるぞ!」

よりも幾分小さい悟空が、尻尾をゆらゆら揺らしながらにかっ、と言った。
マンガをパラパラッとしか読んでいないので判らなかったが、こんなに愛くるしいキャラだったとは。
小動物を見るような目で悟空を見るは、いつのまにかしまりのない顔になっていた。

「悟空は可愛いね。」
「ん?サンキューな」

”悟空は可愛いね。”がこれからの口癖になるとは思いもせず、は依然しまりのない顔で言う。
本当に、悟空は可愛い。今まで出会ってきた人のなかに、果たしてこんな可愛い子が居ただろうか。
いや、いない。

こんな可愛い子のところにお世話になっちゃっていいのかどうか、は暫く悩んだが
ご好意は素直に受け取らなければ、とはニヤリと頷いた。

「ここがオラん家だぞ。」

案内されて、はお邪魔しまーす。と元気よく入室した。















アトガキ
悟空は可愛すぎます。