シンプルな悟空の部屋を見渡して、はその場でずっと立ち尽くす。
こんなような家を、原作で見たことがある。うわぁ、本当にDBの世界みたい・・・。
本格的に、DBの世界に来てしまったのかな?と、ぼんやりする頭で考える。




これからお世話になります




「どうしたんか?」
「いや別に・・・。ところで、この近くに滝かなにかある?」
「おぉあるぞ!」

先ほどから聞こえる滝の音。つまりこの近くには滝があるのだろう。
悟空の返事を聞いて、やっぱり。と一頻り頷く。

「じゃあ・・・そこへいってくる。」
「一人でへーきなのか?」
「平気。音を辿っていくから。」
「そっか。じゃあ、オラは飯とってくるから!」

飯とってくるから?変な日本語に首を傾げるが、とりあえずいってらっしゃい。と
家をでていく悟空に手を振る。
すると、悟空も笑顔で手を振りかえしてくれて(序に尻尾も)、は本日二度目の
「悟空は可愛いね。」を呟いた。

「さて、行きますか。」

は滝の音のするほうへ、足を進めた。


(私は――帰れるのかしら。)

一人きりになって、突然弱気になったが、顔色を曇らせる。

(お母さんも、お父さんも、心配してるのかしら?)

いつも会ってるからこそ、突然の別れは誰と別れるよりも悲しい別れである。
帰れるものなら帰りたいけど、それは無理なような気もした。
ドラゴンボールを集めれば、何でも願いを叶えてくれるらしいが、果たして日本へ帰れるのか。
ここの舞台も地球らしいが、絶対に自身が住んでいた地球とは違う。それだけは断言できる。

(今は帰りたい気持ちは少ないけど・・・。)

いつか帰りたいと願う日がやってくるのだろう。
それとも、もしかしたらこの地球にいたいと願う日がやってくるのかもしれない。
今はなんともいえないが、ただ一つ。は深く後悔している事があった。

DB全巻読破しとけばよかったなぁ・・・!

今となってはもう無理な話であるが、しみじみDBを読んでおけば、これから何が起こるかも
わかるのに、とは深いため息をついた。

だが、なぜか知らないが、は悟空はチチと結婚することだけは鮮明に覚えていた。
なんでだろう。と素朴な疑問を思い浮かべたが、すぐに考えるのをやめた。


「ほわー凄い迫力・・・。」

間近で見る滝は、音もそうだが、滝そのものもとても迫力が感じられた。
轟々と唸る水の音。エンドレスに聞こえてくるその音に、耳はをじっくり聞き入る。
流れてきた水は、下に位置する岩石にぶつかり、砕け、そして四方へ散る。

「こんなに間近で滝を見たのは初めてだわ。」

滝をじーっと見つめて独り言を次々に呟いていく。

「これからどうすれば・・・。」

重々しいため息をついて、滝を見つめる。
これからのことは漠然としか思い浮かばない。迷惑だろうが、暫くは悟空にお世話になろう。

ー!」
「ぎゃっ!?」

子供特有の甲高い声で突然、いつの間にか至近距離にいた悟空に名前を呼ばれて、
飛び跳ねるくらい驚いたは、本当に飛び跳ねて、重力に逆らうことなく落ちていった。

滝に。

!?」

悟空が叫び、滝へ急いで飛び込んだ。

「がばっ!泳げな・・・・っ!たすけーっがはっ!」

カナヅチは、両手を必死に振り、溺れないように頑張るが、どんどんと沈んでく。
悟空は慌てての身体を水中から持ち上げる。

「大丈夫か!?」
「げほっ、だ、いじょうぶ・・・」

どうにかこうにか陸地にあがったは、うう。と唸る。
悟空は心配そうに顔をゆがめて頻りに「大丈夫か?」と尋ねる。

「大丈夫・・・よ。」
「ホントか!?痛いとこないか!?」

心配性な悟空を安心させるようにうっすら微笑んで、本当に大丈夫。とあやすように言う。
ようやく安心したらしい悟空が、そっか。とようやく笑みを取り戻した。

・・・確か、悟空は小さいときに育ての親、孫悟飯を亡くしたんだっけ――――。
小さい悟空にとって(今も全然小さいけど)近しい人の死は衝撃的で、悲劇的なものだったろう。
まだ両親が健在しているにとってはまだわからぬ悲しみであるが、いつかそのときがくるのだと思うと
とても怖くなる。それをもう、悟空は経験してるのだから、人間の死と言うものを身近に感じて怖いのだろう。

「でも、服がビショビショだわ・・。」

滴る水を見てが露骨に嫌な顔をする。
水に濡れるのは嫌いだ、後始末が面倒だから。

「オラもビショビショだ。」

自分の姿を見てぽつりと呟く悟空。

「・・・もどろっか。」

そういっては立ち上がり、悟空の家を目指した。















アトガキ
木村はとてもリアクションが大きいので、もしかしたらワザとだと思われるかもしれませんが・・・。
全部素で驚いてるから!(誰に言ってんの