「そろそろ寝っか。」

眠たそうに眼を擦るところを見ると、悟空は眠いのだろう。対するは全然大丈夫である。
まだ、多分9:00にいくかいかないかのところだろう。悟空は、随分と規則正しい生活を送っているんだろう。
はうん、と頷いて家へ戻った。




おやすみなさい




「ただいまー!」

眠たそうな割には威勢良く言った悟空に続いて、も「ただいま。」と小さく呟いた。
直前に、「ただいま。」と言うか「お邪魔します」と言うか迷ったが、これからお世話になると言うことで
「ただいま。」にした。その方が自然だろう。

「オラ、誰かと一緒に寝るの久々だぞ。もか?」
「そうねー。小さい頃以来ずっと一人で寝てるわよ。…って、一緒に寝るの!?」
「?だってよ、ベッドいっこしかねぇぞ。」

そう言って悟空はベッドを指差した。確かにベッドは一つしかない。
同い年の男子と一緒のベッドで寝るとは…。とは思わず頭を押さえる。
だが、そう悩んでも居られない。自分の立場は、悟空に助けてもらったのだ。
寝床があるのなんて、夢のような状況なんだから…。

「…うん。じゃあ、一緒に寝よ!いや、寝させてください!」
「うん!でもじゃ、キタンマクラできねぇーな。」

惜しそうに呟く。キ、キンタマクラって…!は顔が真っ赤になるのを感じた。
そんなの様子に気づくこともなく、ふかふかで気持ちいいんだけどなー。なんていっている。

「ま、ともかく寝よぉぜ。」

ふわぁぁ。と大きな欠伸を一つして、ベッドへ横になった。も躊躇いがちにだが、ベッドへなる。
二人で寝るには少々きついが、寝れないこともない。隣には悟空の横顔があって、なんだか変な感じだ。
すると、視線に気づいた悟空が顔をこちらに向けて、何度か瞬きをする。

「なんだか変な感じするなぁ。」

にっ、と無邪気に笑った悟空。そんな笑顔を向けられては、心臓が騒いでしまう。
別に恋愛感情を抱いているわけではないのだが、こんな可愛らしい男の子に至近距離で
笑顔を向けられたことがないわけで、免疫が出来ていないはすぐに真っ赤になってしまうわけだ。

「なんだかおめぇ、すーぐ顔赤くなるな!暑いのか?」
「え?う、うん!とっても熱いなぁ!!(悟空の思っているのとは別の意味でね!)」
「大丈夫か?一度水浴びに行くか?」
「そこらへんは平気!大丈夫大丈夫、寝よ寝よ。」

半ば無理矢理、上体を起こした悟空をベッドに横たわらせて、一息ついた。

「おやすみ、悟空。」
「おう。おやすみー。」

のほうを向いて目を瞑った悟空。も悟空のほうを見て、静かに瞳を閉じた。
疲れからか、その日はすぐに意識が遠のいて、夢の世界へと向かっていった。


ー!!」
「どおしたの、悟空?」
「大好きだぞー!」

こちらに駆け寄ってきた悟空が、飛んだと思ったらに飛びついてきた。
地面に尻餅をついたが、不思議と痛みを感じない。そんなことに構わず私の頬に頬擦りをしてくる悟空。
可愛い、可愛いが一体どうしたのだと問いただしたくなる。それにしても重い、悟空って結構体重あるんだな。

「あれー!?悟空!?ごくうー!?」

いつの間にか、悟空は石になっていた。



ハッ!
一面に広がるのは天井。今までの光景が全部夢だったと理解するのに、数秒かかった。
とりあえず、起きても元居た自分の世界に戻れて居ないことは、部屋の雰囲気が違うことから
明白だった。残念だが、何処か嬉しい自分も居た。まだ悟空と離れていない。
そんなことを考える自分は、何処まで彼に依存しているのだろうか。まだ、知り合って一日なのに。

ふう、とため息をついて、隣の悟空の存在を確かめた。
寝息を立てて、規則的に胸を上下させている。確かに寝ている。

悟空が起きない程度に、髪を撫でてみる。
何とも形容しがたい、よく言えば個性的なこの髪型だが、実は悟空の髪は柔らかかった。
絶対に硬いと思ってたのに…。意外な手触りに、半ば無意識に髪を撫で続けた。

意識を取り戻したのは、悟空が寝返りを打ったとき。
ハッとしたは、悟空の寝顔を見て小さく微笑んだ。 ――可愛いなぁ。

「んぅ……。」

うわ言のように呟かれた、自分の名前。勿論寝言だろうが、なぜか自分が夢にでていることが
とても嬉しかった。どんな夢を見ているんだろうか、と次の寝言を楽しみに待つ。

「…もう食べれないよ…むにゃむにゃ。」

って、お食事中かい!!!!!!!!
差し詰め、私はお料理担当だろう。とがっくりため息をついた。

「オラが…まもっからよ…。」

いきなり場面が変わったのか、大分食事とは関係ない言葉が漏れた。
誰を守るの?と思い、暫く次の寝言を待ったが、それから悟空は寝言を言わなかった。