金髪少女との出会い




家へと入ると、階段から女の子が降りてきた。金髪の髪を耳の上でみつあみをしていて、少女が動くたびに
活発に揺れていた。フローラ以来の同年代の少女だった。

「おじさまおかえりなさい。」
「この女の子は??」

パパスは困った顔をしてサンチョに問うと、階段の上から女性の声がした。

「あたしの子だよ、パパス。」

階段に注目が集まる。階段から降りてきたのは、太目の女性だった。
パパスは女性の顔を認めると、納得したような顔になり、微笑みを浮かべた。

「ダンカンのおかみさんじゃないか!」
「この村にご主人の薬を取りに来たって言うんで、寄ってもらったんですよ。」

サンチョがにこにこと言った。どうやらサンチョも”ダンカンのおかみさん”と知り合いらしい。
は全く判らないので、少し退屈を感じ始めていた。

…つまんないよ。」
「僕もだ…。」
「ねえ、大人の話って長くなるから上に行かない?」

二人のもとにやってきた少女が、可愛い顔に眉を寄せながら提案してきた。
は頷き、「同感ね。いきましょっか。」と上へ行くことにした。も黙ってそれについていく。

「私はビアンカ。私のこと、覚えてる??」

ビアンカと名乗る少女。は全く覚えていなかった。
はう〜ん…と唸り必死に思い出そうとするが、記憶に残っていないらしく、にバトンタッチするように
小突いてきた。だが、も全く覚えていない。ここは正直に言おうと思い、「ごめん。」と謝った。

「そうよね、あなたたちまだ小さかったもんね。私は八歳だからあなたたちよりも二つもお姉さんなのよ。」

二つも…二つしかの間違いじゃないですか。
は思ったが、そんなことをいったらビアンカに怒られそうなので、言わなかった。
だが、自分たちはビアンカのことを全く覚えていないのに、ビアンカは自分たちのことを覚えているのはすごいと思った。
やはり、二つの歳の差は、「二つしか」ではなく「二つも」なのだろうか。

「そうだ!本を読んであげるわ!!」

ビアンカが本棚からやけに分厚い本を持ってきて、テーブルに置いた。
本は大分埃を被っていて、置いた瞬間凄い量の埃が舞った。

「えーと……。そ…ら…に…。えーと……。く…せし……ありきしか……。
 えーい!こんな難しい字がいっぱいの本読めるわけないじゃない!!」

バタン!と本を閉じ、ぷりぷりと怒りながら本棚に戻した。
は、本の内容が全くわからなかった上に、突然の逆ギレについていけなかった。

「ビアンカ、そろそろ宿に戻るわよ!」
「はーい!」

ビアンカはじゃあね、と手を振りながら階段を颯爽と下りていった。
まるで嵐のような少女だった。はビアンカが去ったあと暫く黙っていたが、
「凄い女の子だったね。」等と言い合っていた。

暫くして、スープと共にサンチョが階段を上ってきた。

「お嬢様、坊ちゃま、お疲れでしょう。スープを作ったので、これを飲んで少しお休みになられるといいですよ。」

サンチョからスープを受け取ったは、ありがとう。と礼をいい、熱々のスープを冷ましながら
飲んだ。スープはとても美味しかった。サンチョには料理の才能があると感じた。

飲んでいくうちに眠気が襲ってきた。
最初に飲み終わったは無言でベッドへ向かい、おやすみ。とだけ言って目を閉じた。

「あたしも眠い…。」

閉じたがる瞳を無理矢理こじ開け、まだ半分以上残っているスープに口をつける。
美味しいが、睡魔のほうが強かった。は飲み途中に意識を手放した。
寝言は、「ねむ美味しい…」だったとか。