洞窟探険




「見て!!」

が目を輝かせて指差す先を、が目でたどると、そこには大きな穴があった。
相当前に建てられたであろう看板に、古ぼけた文字でなにやら書いてあるが、字の読めない二人は
当然読むことが出来なかった。

「なんてかいてあるのかしらね?」

がいろいろな角度から看板を見るが、どの角度から見ても、読めない文字は読めない。
暫くずっと看板と無言の戦いをしていたが、やがて飽きた。
ふと、の視線が近くの岩に止まった。少しでも揺れたら、穴に落ちてしまいそうな位置にある。

「ねえ、そこの岩落ちそうだから注意してね。」

万が一岩と一緒にが落ちたら大変だ。はとにかくおっちょこちょいでお転婆なが心配なのだ。
は常に一緒なので、(トイレや風呂、その他諸々は勿論除くが)のことをよく知っている。
だから、注意しても彼女には意味がないことは知っていた。なぜなら、彼女は自分がおっちょこちょいだということを
自覚していないからだ。

「ほんとだ。どれどれ、ってうぎゃー!」

つんつん、と岩をつついた途端、岩が穴に吸い込まれるように落ちていった。
幸いにもは巻き込まれることなく無事だった。はほっと胸を撫でろした。

「落ちちゃった…。」
「そんなことよりが無事でよかった…。大丈夫、下に人が居るわけでもないんだからさ。」

それもそうだね、とは頷き、二人は先を進むことにした。



暫く進むと、人が倒れているのを発見した。急いで駆け寄ると、男性の上に岩が乗っかっていた。
どういう状況なのだろうか?は不審がる。落石??ともかく、きっと男性は危ない状況だ。
二人は力をあわせて岩をどかした。

「おじさん、大丈夫??」
「ん…パパスの子供じゃないか。こんなところまでよくきたね。それにしてもよく寝た…。」

どうやら男性は寝ていたようだ。二人はほっと息をついた。
だが、岩が乗っていたにもかかわらず生きているなんて。普通じゃ考えられない。

「イキナリ上から岩が落ちてきてね。いやはや、意識を失ったみたいだ。」
「!?危ない…それより、生きていて何よりだよ!!」

いきなり上から岩…も、もしや!?

は気づいてしまった。
男性に岩を落とした犯人はだ。上を見れば、大きな穴が開いている。ほら、間違いない。
は気が重くなった。だが、は気づいていないみたいだ。

「ところでおじさん、こんなところで何してたの?」
「薬草を取りに来てたんだ…ああ!しまった、ダンカンのおかみさんを待たせてたんだ!それじゃあ、失礼するよ!」

男性は顔を真っ青にして、そそくさ立ち去った。残された二人はお腹もすいてきたし、疲れたし、
とりあえず洞窟を出ることにした。



洞窟を出ると、もう既に夕日が沈みかけていた。随分と洞窟に居たようだった。
急いで家へ帰ると、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐった。と同時にぐぅ、と情けない音が鳴った。

「サンチョ、おなかすいた!あ、父さん。お帰りなさい。」
「どこにいってたの??」
「ちょっとな、それより、お前たちはどこへいってたんだ?」

すかさずきいてきたパパスに、は少し口ごもりながらもぎこちないえみをうかべる。

「ちょっと冒険に」
「…なるほどな。キケンな真似はしてないか?」
「僕が見張ってたから大丈夫」
「そうか。それなら安心だな!」

パパスは大きく笑うと、席に座るように言った。二人は指定の席に座り、会話を交えつつ夕飯を待った。
程なくしてサンチョがトレーに三つのシチューを載せてやってきた。

「今日はサンチョ特性シチューですよ!」
「おいしそー!」
、にんじん残しちゃ駄目だよ??」
「え…も、勿論よ」
「はっはっは!」