自由気侭なおにゃんこ体質





ちゃん?」
「気安く話しかけないでよ、クソ軍主。」

クソ!?世界で一番可愛いって言っても過言じゃない女の子、ちゃんが僕に向かってクソって言った!!
彼女の機嫌はとっても斜め。どれくらい斜めかと言うと、リアルに89度。もはや直角、むしろ直角。
なぜこんなにも不機嫌なのかといえば、数分前にさかのぼる。そう、カスミと少し話をしてただけなんだ。
他愛のない話を。本当に少し…。

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トラン湖の滸であるトラン城は、周りが湖である。久々にすることもなかったので、たまにはのんびりするのも
いいと思い、ぼうっとトラン湖を眺めていることにした。するとそこに、カスミがやってきた。

「こんにちはさん。」

カスミはにっこり微笑むと、僕の隣に腰掛けた。僕が頭を下げると、カスミは少し顔を赤くした。
僕は特に喋る話題もなかったので、黙っていると、カスミが「そういえば」と口を切る。

さんはチョコとかお好きなんですか?」

カスミが質問を投げかけてきた。
チョコ…か。暫く食べてないな。そんなことを考えながらも、頷いた。

「…好きだよ。カスミは?」

僕が好き、と言った瞬間カスミの身体がびくっと震えた。え、どうしたんだろ。
好きって聞くと痙攣するのかな。なんて…そんなわけないか。

「好き、ですよ。」

とても嬉しそうに言った。相当カスミはチョコが好きらしいな。好き、と言う時の顔が本当に好きそうだった。
それにしても、チョコをそこまで好きと言う女の子ははじめてみた。僕がまじまじとカスミの顔を見ると、
カスミは顔を真っ赤にして、すくっと立ち上がり、

「そ、それでは!!」

と叫んであっという間に消えてしまった。カスミ…不思議な子だ。視線を再び湖に戻すと、そこに…!
先ほどまでは確かに何も存在しなかったのに、なぜかが仏頂面で佇んでいた。
僕は声にならない悲鳴があがった。人目でわかったんだ、は今、最高潮に機嫌が悪い、って…。

?ね、ねえ…」

ぷい、と顔を背けて「死んじゃえ」って確かに呟かれた。し、しんじゃえ!?
仮にも僕ら、仲間で、恋人なのに…!僕の心が音を立てて砕け散った気がした。ブレイクハートだ…っ。
そして、冒頭に戻ると言うわけで…。

「どうしてそんなに機嫌が悪いの?」
「自分の胸に聞きなさいよ。死にたいの?」

僕は泣きたくなるのを必死に堪えた。っていうか、もう涙が目尻にたまってる。
こうなったら…。おにゃんこ体質な彼女は、ものでつるしかない。でもなんだか悲しくなるからこの手は使いたく
なかったんだけど、しょうがない。このままじゃが一生僕とマトモな話をしてくれない気がする。

…今夜の夕食のデザート、全部あげるから、ね?機嫌直して?」
「…ほんと?」
「勿論!」
「今夜のだけ?」
「こ、これから1週間!」
「わーいっ!ありがと、!」

途端満面の笑みを浮かべて飛びついてきた。ああ、やっとちゃんと名前で呼んでくれた。
これで仲直りだ…。デザートを使うしかないって言うのが、悲しいけど。

「なんで機嫌悪かったのか聞いてもいい?」
「だって、がカスミに好きって言ってるんだも〜ん。いくらチョコの話でも、やきもちやいちゃうよ。」

や、やきもち!?なんて可愛い彼女なんだ…っ!ああ、僕って重症なのかも。でも、が好きなんだ。
ていうか僕らの会話、最初から最後まで聞いてたんだ。どこで聞いてたんだろ。まあ、そんなこと
どーでもいっか!この、自由気侭なおにゃんこ体質な。本当に僕、に弱いなあ。