日突




「38度・・・もう、坊ちゃん!昨日かえってすぐにお風呂に入らないからですよ!」

体温計を見てため息をついたかと思うと、病人には少しキツイ程度の声量で怒られた。
昨日、テッドとの狩りの後、僕は汗だらけの身体なのも忘れてただひたすら部屋から見える
表通り、黄金像前を見つめた。白衣を着た、ハチミツ色の髪の女性―――
思い出すだけで胸が高鳴る。こんな想いは初めてで・・・。
グレミオの声なんて全くの無視。結局風呂に入ったのは鶴の一声こと父、テオの一言を聞いてからだった。

「今日は絶対安静ですよ!」
「・・・うん」
「それと、あとでお医者様が来ますから。」
「・・・わかったよ」

返事をするのも気だるい。風邪は厄介だ・・・。
額に濡れたタオルを置かれる。ああ、冷たくて気持ちいい・・・。
こんなとき、あの人がお見舞いに着てくれたらなぁ――――。想像するだけで顔が緩む。
と―――自分はいつから妄想狂になったのか。静かに苦笑する。

そろそろ寝よう。夢で彼女に会えるかもしれない―――
淡いを期待を胸に目を閉じた。




白衣を着た、ハチミツ色の髪した綺麗な女性。
花畑の中で微笑んでいる。遠くからで聞こえないが、口の動きをよく見ると



そう呼んでいる。
僕も呼び返したかった。でも声が出なくて、名前を呼ぶことは叶わなかった。
それがもどかしくて、僕は走り出した。
もうすぐ、もうすぐで彼女のもとへ――――






どれぐらいたったか。沈黙だけが支配していた部屋にノック音が響く。
ぼんやりと意識を取り戻し、薄く目を開ける。
人の気配がする。少し身じろいでその気配を確かめる。グレミオと、白衣を着た・・・

「!?」

驚いた。単純に驚いた。

「ごめんなさい、起こしちゃいました?」

心地よい音域の声で、ふんわりと微笑む姿はとても愛しい。心臓がバクバク煩い。
白衣を着た、ハチミツ色の髪した女性。

―――――昨日の女性だ・・・。
頭の痛みなど気にせずに、額からタオルが落ちるのも気にせずに、上体を起こした。
失礼だと思いながらもじーっと彼女を見つめる。

「・・・?どうかしました?私、と申します。今から診ますからね?」
「―――――え、あ!はい」

声が裏返ってしまった。大失態だ。
白衣の女性は・・・・・・さん。心の中で何度も””と呟く。
ぼーっとしていると、突然さんの白い手が僕の頬に触れる。
ひんやりとした感じが頬から伝わる。だが、身体は熱い。

「ほっぺ、熱いですね。辛いでしょう?」

まるで自分のことのように悲しげな顔になった。
か、可愛い・・・!僕の心臓が更に激しく早鐘を打つ。
少しして頬から手が離れる。それまで触れていた部分に一気に熱が舞い戻ってきた。


「はい、あーんしてください」

言われたとおり口をあける。彼女の顔が近くに来る――――
僕は顔が熱くなるのを感じた。今は風邪のせいだと思われているから大丈夫だろう。
喉を覗かれ、うーん。と唸るさん。難しい顔をするさんもまた・・・純粋に可愛いと思った。
綺麗、というより可愛いのかもしれない。
それよりも、”はい、あーん。”がお粥かなんかだったら・・・大本望なのに。

「赤くはれてますね。暫くは安静ですね。お薬、あとで処方してお届けしますから」
「ありがとうございます、助かります」

グレミオが微笑んでお礼を言うと、さんも微笑んだ。
僕はゆっくりと横になると、さんと目があった。途端火照りだす身体。
「つらいだろうけど頑張ってね」と声をかけられ、何度もうなづく。

「では失礼します」

荷物を持つと、さんは僕の部屋から立ち去った。
グレミオは落ちたタオルを手に取り、「湿らせてきます」といって部屋から出て行った。

「あえ・・・ちゃった」

うわ言のように呟いた。彼女の顔は何よりも美しく、自分の顔を見られるのが気恥ずかしかった。
白衣を着た、ハチミツ色の髪した天使―――――
あとで薬を届けにきてくれるといっていた。きっと後で会えるはずだ。
まどろみ始めた意識のなかで、最後に現れたのは笑顔のさんだった。
















アトガキ
純情少年って、書いてて楽しいんです(ぁ
私は病院にいって診療うけるとき、あーんして木の棒みたいなの舌に当てられて喉見られます。
ただそれだけですが┐(´ー`)┌