葉が




さんが処方してくれた薬はとてもよく効いて、次の日には身体からダルさが抜け
喉の痛みなどもなくなり、ただいま外にでている。
バルバロッサ皇帝の黄金像は今日も太陽光を受けて威厳溢れる光を放っている。
空は雲ひとつない晴天。まるで僕の復帰を祝っているようで、嬉しい。

外は風が容赦なく僕に纏わりつく。まだまだ寒い外気に身を震わせ、僕は地図とにらめっこする。

―――――確かこっちでいいはずだ・・・。
グレミオのかいてくれた丁寧な地図と路地を見比べながら、眉を寄せる。
実は、今日はさんのところへといこうとしている。
薬がきれてしまったんで、念のため一日分もらってくる。と言うと、グレミオが「私がとりに行きます!」
と名乗り出てきたが、僕は断固として拒否し、どうにか僕がいくことになったのだ。

「本当にこっちでいいのかぁ?」

この地図を疑うわけではないけど、いつまで経っても辿り着かないので思わず愚痴をこぼす。
若干狭い路地に来ていて、右を見ても左を見てもお店の前で威勢よく声を出しているおじさんたち。
「安いよ!」だとか「新鮮だよ!」だとか、みんな客を呼び寄せようと必死だ。
商売を邪魔して、悪いとは思うが、病院の場所を聞こうと、一番近くの店へと近づいた。

「あの・・・」
「へいらっしゃい!坊ちゃん、何が欲しいんだ!?」

気さくな笑顔を浮かべたおじさん。

「えっと、「あら、君?」

途中、誰かに声をかけられる。通りはがやがやと賑わっていて、それが誰だかは特定できない。
だが、僕を君付けして、尚且つ僕の胸が高鳴る声。これは・・・。

「もう外へ出て平気なの?」

振り向けば、白衣を着たさんが微笑みを浮かべて僕を見ていた。
今日は髪を二つに結んでいて、昨日見たよりも幼く見える。

「は、はい!あ、えっと・・・今日薬もらいにいこうとしてたんですけど・・・場所がわからなくて」

照れ笑いを浮かべて答えると、「あらあら」と苦笑いを浮かべられる。
どの表情も美しく可憐で、とても惹かれる。

「じゃあついてきて。すぐそこですよ」

僕はおじさんに頭を下げて、前を行くさんの後に続いた。
依然としてこの通りの賑やかさは衰えず、「お嬢ちゃんお嬢ちゃん!」と呼ばれたおばさんは
満更でもない様子でにんまり、「あらあらお上手ね!」と笑っている。

僕の前を行くさんの背中は小さく、儚い感じが女の人を思わせる。

「症状はいくらかよくなりました?」
「ええ!おかげさまで・・・」

振り向き尋ねられる。僕は微笑みを浮かべて返答する。
「並んで歩きませんか?」と尋ねられて、僕は慌てて隣に赴いた。

「あ、どうぞ。のど飴です。」
「ありがとうございます」

白衣のポケットから、さんがのど飴を取り出して僕にくれた。
袋を見ると、ノンシュガーとかいてあり、少し顔を顰める。だが、そんなことは関係ない。
さんからもらったもの・・・本当はとっておきたいけど、もらっておいて食べないなんて
隣にいるのに失礼なので、惜しいが袋を破る。取り出したのど飴は茶色で、透明で、
何処かさんの瞳の色と似ていた。

「いただきます」

口に放り込むと、甘みはしないものの口の中に飴の味が広まった。
ノンシュガーもいけるかもしれない、と思いつつもさんを見上げる。

「おいしい?」
「おいしいです!」

僕の言葉に、さんは嬉しそうな微笑みを浮かべて「よかったです」と言った。
さんの笑顔は、どうしてこうも僕の胸を締め付けるのか。
これが、”恋心”というのか――――?

「この角を曲がったらつきますよ。」
「あ、はい。」

今はさんと仲良くなることだけを考えよう。僕は深く頷き、頭をリセットした。



病院に辿り着き、診察室へ案内された僕は、患者用のイスに座らされる。
改めて診察室を一望すると、小奇麗にされていて、流石はさん。と勝手に感動する。

「とりあえず、診察しますよ。」
「はーい。」

イスに腰掛けて足を組み、惜しげもなく生足を晒すさん。白い肌に、細い足。
その姿が眩しくて、僕は目のやりどころに困ってしまう。

「じゃあ、お腹出してくれますか?」
「は、はい。」

慌てて服を捲り、腹部を晒す。自分で言うのもなんであるが、腹筋は毎日やってるんで
一応引き締まっている。これで点数アップしたら嬉しいのだが・・・。

「わあ、男の子ですねぇ・・・。すごい、腹筋が割れてるじゃないですか。」
「そ、そうでもないですよ」
「そんなことないわ!こういう、引き締まった身体の男性って憧れますもん・・・」

胸の前で指と指を絡め、満面の笑みで嬉しそうに語るさん。
何気ない仕草。何気ない言葉。その一つ一つが総て僕の胸に心地よく響く。

「さ、触ってみます・・・?」
「ほ、本当に!?本当に!?」
「ええ、こんなんでいいなら」
「か、感激です!ありがとう君!」

泣き出しそうな笑顔で何度も頭を下げ、躊躇いながらも僕の腹筋に触れた。
温かなさんの手。お腹から全身へと染み込むように伝わってくる。
それからさんの手は僕の腹部を円を描くように撫でた。
初めての感覚。僕は一瞬にして鳥肌が立った。顔が火照り始める。

「カッコいいですね、君」

手が腹筋から離れ、にこっと微笑んだ。
天使のような微笑みに、僕の顔はますます赤くなった。
















アトガキ
のど飴の味は秘密です(おいおい
って、診察すっぽかしてセクハラしちゃってます、ヒロイン!(ええー