はよく空を見上げては顔を綻ばせていた。
何が嬉しくて空を見ているのか、僕にはわからなかったけど。
ほら、今日も彼女は空を見上げている。















君が見ていた青空を、僕も見ているよ









「澄みきった晴天だね。」

青空を見上げながら、が僕に言う。僕も空を見上げれば、そこにはただ雄大に広がる青空。
海と、青空と、それらが交わる水平線の彼方はいったいどうなっているのだろうか。
僕はらしくもなくそんなことを考えた。

は、空は見ないの?」
「うん、見ない。こそ、何でそんなに空ばっかり見ているんだい?」

僕が折り返しに問い返すと、はうーん。と唸りまた青空を見上げる。
それがやっぱり、僕には不思議でならなかった。

「ティルも同じ空、みてるかな?って思って」

ずきん。
僕の心が痛んだ。まるでキミのその短剣で、この胸を刺されたみたいだ。
は僕以外の誰かを、好き。認めたくもない事実は、十分に知っている。
知っているけど、認めたくはない。
その人は、百年後くらいに僕と同じ天魁星に選ばれる人で、テッドの親友らしい。(百年後の世界では)

「でも、見てるわけないよね。時代が違うんだもん」

悲しそうに笑うキミの顔、そんな顔は見たくないよ。
僕は笑顔を作って彼女のおでこに自分のおでこをぴたっとくっつけた。

「そんなことないよ、きっと、見てるよ」

おでこを離すと、の可愛らしい顔が笑顔で彩られていて、僕の心臓は忙しく動き出すのだ。
静まってくれ、と願うにもかかわらず、意思に反していまだに激しく動いている。

「ありがとう、は優しいね」

そういって微笑んだキミの顔は、僕の心に印象深く残る笑顔でした。

「さあ、!今日も一日頑張ろう!!」
「うん!」

そうして始まった何気ない日常。これも何気ない日常の1ページに過ぎない。
ティルさんには悪いけど、今は僕がの笑顔を占領してもいいよね。



数日後、は未来にいってしまった。
いつも空を見上げている場所にはもう、はいなくて。
僕は胸を締め付けられる。
空を見上げれば、数日前と似通った青空。

・・・」

キミも、空を見上げているかな。
それとも、ティルさんのもとにいけたから、もう見てないのかな。
願わくば、見ていることを信じて。

君が見ていた青空を、僕も見ているよ。