仲間になったテッド君は、まさかと思ったけどの大親友のテッド君だった。
彼の話からは、明るい印象をもたらしていたけど、今のテッド君はネガティブ思考気味な印象がある。
人は変わるんだ。あたしは呑気にもそう思った。

そうだ、テッド君と仲良くなろう!どんな人か知りたい!
と思ったのは数日前。それから即挨拶とかをすれ違いざまにしてみたりしたけど、頷かれたりするだけで
返事は返されなかった。

どういうこと!?どうやってと仲良くなったのよ!?

この時代ではまだ姿も形もないのお気楽そうな笑顔を思い浮かべて、苦悩した。















君を想うが故に、僕は此処にいる









「お?」

朝ごはんを食べに行こう。と自室を出たところ、目の前にテッド君が静かに佇んでいた。
視線はどうやらあたしの部屋の扉を見ていたらしく、一瞬あたしと目があったけど、すぐにそらした。
何であたしの部屋の前にいるかは永遠の謎として。

「おはようテッド君」
「・・・はよ」

やっぱり朝の挨拶は基本だよね。
最近挨拶を返してくれるようになった、少々ぶっきらぼうな所がたまに傷なテッド君。
同じ不老として、彼とは仲良くやっている気がする。

あくまで気がする。

何故、かといえば、あっちがコチラを好いているかどうかは不明だから。
ソウルイーターは愛の紋章を宿しているあたしの事を喰らわないから、
安心して心を許してくれるかもしれない。そう思ったのも束の間。

テッド君はあたしが何をしても興味関心がないように白けた目で見やってくるし。
どっかの風使いみたいに、バカじゃないの、を沢山言ってくるし。

なんていうか、好かれている気がしない。

「ねえねえ、一緒に釣りしない??」
「何で俺なの?」
「テッド君と仲良くしたいなぁ〜なんて」

隠しても無駄なことは知っている。だから包み隠さず白状した。
すると、テッド君は滅多に見せない笑顔をあたしに向けた。

但し、挑戦的な。

「面白いね、俺と仲良くしたいなんて。どっかの軍主みたいだよ」

それだけ言うと、さっと踵を返した。
あたしが慌てて追いかけ、隣に並ぶと、ご丁寧にテッド君は歩調をあわせてくれた。

「ねえ、一緒に釣りしようよ」
「――――仕方ない」

とうとう折れたテッド君。あたしは心の中でガッツポーズを取った。


+++


ななな、何では俺なんかを釣りに誘ったりするんだ?
俺はバカだから、素直になれなくて、意地張って。本当は、好きで好きで仕方ないのに。
素直になれない、俺のバカな口が「バカ」だとかいっちゃってる。バカは自分だバカ。

最初は、愛の紋章の継承者ということで興味が行った。愛の紋章の事は生憎知らないが
俺に魂を喰われないらしい。だからといって、自分から話しかけたりはしなかった。

でも・・・でも、彼女を見ているとドキドキして、目が合うとすぐ逸らしちゃって。
なんだか、今迄感じたことのない感情が渦を巻いている感じだ。

最近になって、は俺に話しかけてくるようになった。
本当は、嬉しい。でも、やっぱり素直になれない、俺のバカな口が「バカ」だとか言ってしまう。
感情表現が上手くできないこの顔は、笑顔になることを恐れてつい白けた感じになってしまう。

それが、今日俺は釣りに誘われた。
態度も口も最高に悪かった俺の事を、彼女から誘ったのだ。

俺は、今回は流石に笑顔になった。
ただ、笑顔になるのを堪えたため、口許を吊り上げた形になってしまった。
まあ、いいだろう。

俺は、「いいよ」と肯定の返事ができず、思わず踵を返す。
それを、が追いかけてきて、再度尋ねてきた。

勿論、返事はオーケー。

永遠に紋章と生きていく。と決めたのに。
誰とも関わらずに生きていく。と決めたのに。

まるで噴水のように溢れる感情を、抑えられるわけもなく。
ここにきて、閉ざされていた心に一筋の光が差し込む気がして。

これは限定だが。

彼女はソウルイーターが喰らわない。だから安心できる。
だが他は違う。他の宿星は喰らってしまうんだろう。”これ”は

なら、俺がここにいる理由・・・。
恩を返すためでも有り、を想うからだろうか。
真相はまだまだつかめそうにない。

本当のところは、恩を返すというのを口実に、の傍にいたいからなのかもしれないけど。

俺はに手を引かれながら、釣り場へと向かった。
つないだ手の温もりが心地良くて、でも確かに心拍数を上げている。
歩くたびに、の短剣と、俺の弓と矢がそれら特有の音を響かせる。それもまた心地良い。

やがて”えれべーたー”に入り、第二甲板めがけてえれべーたーが上昇した。

「ねえ、テッド君。釣りは始めて?」
「まあね」
「じゃあ、あたしが教えてあげるね!」

屈託ない笑顔でが言うと同時に、えれべーたーのドアが開いた。

「いこ!」

またが手を絡めてきた。ゆっくりゆっくりと、釣り場へと向かう
俺はふと、大胆な行動に出る。

「俺は」

言葉を発すると同時に、足を止めた。が振り返り、首をかしげている。
俺は一度手を解くと、の顔を見ずに指と指を絡めて手を握る。所謂恋人繋ぎ。
は目を見開き、俺と手とを何度か交互に見た。俺は恥ずかしくなって、目をそらしてしまったけど。

「こっちの方がいい」

先の言葉から大分たって俺が言葉を継ぐ。俺の顔は火照りだし、きっと耳も赤くなっているだろう。
俺としたことが・・・。何処のチェリーボーイだよ。
と、思ったら、のほうも顔を赤らめた。

「あたしも、こっちのほうがいいな。」

照れ笑いを浮かべて、繋がれた手をぎゅっと握った。
そんなを愛しく思うと同時に、わかったこと。

俺はが好き。

これは、変えられない事実だと気づいた。
俺が愛してもいい人なんだ、は。
そして―――――

君を想うが故に、僕は此処にいる。