”恋”って、なんなんだろう?
僕は、その”恋”をしたことがないんだ。だから、よくわかんない。
でも――――

ちゃんの笑顔、好きだな。
ちゃんの声、好きだな。
ちゃんの瞳、好きだな。

――――ちゃんが、好きだな。















君の瞳に僕は、釘付けになってしまったんだ









「おはよう、セドリック」

今日も、ちゃんは僕のところに来て、わざわざ挨拶をしてくれた。
僕も返すと、にこっと微笑んでそのままさんの部屋に向かってしまった。
さんはリーダーなのに、ちゃんはノックもせずに豪快の扉を開き、その部屋に入っていった。

これがいつもどおりの光景。

僕は今日も、ちゃんにおはよう、をいってもらって嬉しくて、顔が綻んだ。
昼すれ違えば「こんちわ。」と元気に挨拶されるし、夜には「おやすみ」って挨拶されるし。

僕の毎日に、必要な声。

それから暫くして、ちゃんとさんが一緒に部屋から出てきた。

「あ、セドリック。一緒にご飯食べない?」
「え、うん!いいの?」
「勿論、いいにきまってるよ。」

思いがけないお誘い。僕は最初は戸惑ったけど、直ぐに頷く。単純に嬉しかった。
ちゃんの隣ではさんが穏やかに微笑んでいて、もっと嬉しかった。

「じゃあ、いこう!」

階段を駆け下り、僕とさんの腕に自分の腕を絡ませたちゃんが、施設街に向かった。



「おはよう、フンギ」
「やあリオ!それに、おはよう。今日は何を食べるんだ?」
「騎士団ランチ!」
「じゃあ僕も」
「僕も」

フンギさん特性の騎士団ランチを貰い、早速ご飯を食べた。
ちゃんは絶えることなく話題を提供し、沢山喋っては騎士団ランチを口にする。
僕とさんは笑顔で応えたり、時に会話を交えたりしていて、結局、一番最後に食べ終わったのは
ちゃんだった。

「やっぱりフンギのお料理は最高!フンギと結婚したら毎日この料理食べられるのかな?」
「「えっ!?」」

ちゃんが言った言葉に、僕は反射的に驚きの声を出していて、それはさんも同じだった。
そのちゃんの声に、僕の心がずきっと痛んだ。どうしてだろう?
さんの顔は酷く落ち込んでいて、今にも泣き出しそうな・・・僕が見たことのないさんの顔。

「嘘よ嘘、どうしてそう純情少年なのかな〜?」

けらけらと笑うちゃんに、さんはほっと胸を撫で下ろした。何故か僕もため息をついていて。
――――安堵のため息というやつかもしれない。

ちゃんは」

僕が唐突に話を切り出すと、何事かとちゃんとさんが僕の事をいっせいに見つめた。

「”恋”ってしたことある?」
「ん〜・・・ないのかもしれない。でも、お兄ちゃんが大好きで、大好きで、仕方ないよ。」

屈託ない笑みでそう語るちゃん。その”お兄ちゃん”に、僕はむかむかした。
何で?何でだろう・・・?

「セドリックは、あるの?」

真っ直ぐに向けられた、キラキラの星を散りばめたようなプラチナの瞳。
それが、夜空に輝く星のようで、月のようで。僕らを導いてくれる光のようで。

僕は言葉が詰まったんだ。

ないよ。と答えてしまえばすむことなのに。

「・・・わかんないや」

そのときの僕は、明確な答えをこの手に掴めてなくて。
戸惑いながら答えたその答えに、ちゃんは目を細めてそっか。と頷いたんだ。

「じゃあ、もしかしたら、もうすぐ”恋”するかもしれないね」

微笑みながら言ったちゃん。その瞳は・・・切ないほど、苦しいほど綺麗で。

君の瞳に僕は、釘付けになってしまったんだ