君を大好きな僕、僕を大好きな君





我ながら、なんて心が狭いんだと思う。でも、無理だった。あれを見過ごせるほど、僕は大人じゃない。
まだまだ子供な僕は、に少しでも関わる男から遠ざけてしまいたいと思ってる。
だって嫌なんだ。できれば、を僕だけのものにしてしまいたいさ。誰にも見えないところにおいて
僕だけのになればいいのに…。なんて、八割がた本気で思ってる。

?」
「ん?」
「はなしてよー」
「やーだ。」

を後ろからぎゅっと抱きしめて、どこにもいけないようにしている。こんなことをしても、無意味だって知ってるのに。
それでもどこにも行かないように、怖がりな僕が君を必死に繋ぎとめている。君からすればその行為は滑稽
なのかもしれない。そんなことしたって意味ないよ、って優しく残酷な現実を教えてくれるかもしれない。

「どうかしたの?」
「べつに…」
「言ってくれないとわかんないよ?」
「なんもわかんなくていいよ。」
「もう…。」

わがままな僕のわがままを、やさしい君のやさしさで包んでくれる。僕はまだ子供だ。のほうが年下なのに
なんでこんなに大人なんだろう。なんだか、悔しい。


「ん?」
「どこにもいかないで?」
「いかないよ、あ、もしかして、さっきあたしがグレミオと話してたのが気に喰わないとか?」

図星だった。僕は何を言おうか迷って沈黙していると、は笑った。ぴったりくっついてるから振動が伝わってくる。
ああ、やだなあ…。絶対ばれた。

「やっぱりなー」
「まだ肯定してないよ」
「沈黙は肯定、って言葉があるのよ?」

顔が見えないからわかんないけど、きっとはとっても楽しそうに微笑んでるんだと思う。

「だってさ、僕、のことが大好きなんだ。」
「知ってるよ」
「だからさ、やなんだよ。誰かにとられちゃったらって思うと居ても立っても居られなくて…。」
「わたしって愛されてるのね」
「今頃気づいた?僕はに依存してて、本当に自分でもびっくりするぐらい愛してるんだよ。」

なんでこんなに愛しいんだろ。僕、がいなくなったらどうなっちゃうんだろ。

「えへへっ、嬉しいなー。やきもち
「しょうがないじゃん…。」
「わたしのことが大好きだから、やきもちするんでしょ?」
「うん。迷惑?だよね…。」
「迷惑なんかじゃないよ。あたしも大好きだから…。ね?」

普段あんまり好きとか、愛してるとか、言わないが、僕にストレートに愛の言葉を投げてきた。
慣れない事に、僕の心臓は情けないくらい高鳴っていて、心音を聞かれたくなくてから離れた。
するとがくるりと振り返った。僕の顔を見るなりニヤリと笑って、あら〜?と意地悪い声を出す。

「顔が真っ赤よ、君?」
「べ、べつに!」
「素直じゃないなあ〜」
…。」

僕が真剣な声で君を呼ぶと、ん?と微笑みを引っ込めて首をかしげる。

「誰の所にも行かないでね?僕だけのだからね?」
のことがすきなのに、他の人のところになんて、いくわけないよ。こそ、浮気は駄目よ?」
「あたりまえだよ!」

はっきりと答えれば、君が嬉しそうに笑った。