なんで顔が似てるのによ、俺は貧しいんだ。こんなに不幸なんだよ。世の中は不平等だ。
所詮神様なんていない。それぐらい知ってたさ。もう諦めたしな。世界は灰色で、汚い。彩りなんてまるでないんだ。





君の熱で溶かして





「…なんだよ、お前。」

俺が冷たい目で見やると、そいつは不敵な笑みを浮かべて偉そうに腰に手を当てた。

「お前、じゃないわ。よ。」
「だから、なんなんだって!」

突然俺たちのアジトにやってきて、フェイレンとフェイロンをあっと言う間になぎ倒して、俺の目の前で
偉そうな態度とって、一体何がしたいのかわからない。はっきり言って目障りだ。今すぐ消し去りたい。
だけど…こいつ、強い。だって、あのフェイレンフェイロンを一瞬で倒したんだぜ?いくら俺でも、敵う気がしない。

「あんた、ロイって言うんでしょ?」
「だったらなんだよ?」

俺の挑戦的な態度に、って名乗った女はあからさまに顔を顰めて、唇を尖らせた。
そのとき俺は、不覚にも(この表情可愛い…。)って思ってしまったりもする。
何考えてるんだ俺!こんな得体の知れない女に、可愛いだなんて…!

「生意気ね、これからあんたを矯正してやろうっていう人に向かって。」
「はあ?矯正?」

意味がわからない。
苛立ちを感じながらも、大人な俺は冷静に尋ねる。

「そうよ、矯正。あんたのひん曲がった性格治しやろうっていってんの。」
「ひん曲がった性格だ〜?お前、調子こくよな!」

突然現れて、ダチを気絶させて、お前って呼んだら怒られて、そんで俺の性格治してやるとかいいやがった!
いくら大人な俺でも怒るぜ!なんで初対面の女にそんなこと言われなきゃいけないんだっての…

「調子なんてこいてないわよ!あんたのためを思って言ってんの。おわかりかしら?」
「てかその前に!お前誰だよ?」
よ、さっきも言ったわ。」

さっきも言ったわ。じゃねえ、こいつ絶対馬鹿だ。

「さっきも聞いた。そうじゃなくて、もっと違うことだよ!たとえば、歳とか」
「意外と17歳」
「歳相応だろ」
「えー!もっと大人っぽいわよ!」
「どっからどう見ても歳相応だっつの!」

あまりに滑稽なことを言うに、思わずははっ、と軽快に笑ってはっと気づいた。
何コイツのペースに巻き込まれてんだ、取り戻せ、俺ペースを…!

―――でも、ああやって単純に笑ったのって、久々だ。そう、あれはまだ世界が綺麗だと信じていた頃。
遠い昔は、自然に笑えていた。世界は汚いと知ってからは、笑うことができなくなっていった。

こいつは、何者だ?
世界は灰色なんだ、それでもこいつには、色があるように思える。赤かったり、オレンジだったり、暖かい色。
目の前で怒ったり笑ったり、いろんな表情を見せる多彩な色を持っている。やっと見つけた彩り。

「…おい。」
「おい。じゃないわ、って何度言わせれば判るの?」
「いいぜ。」
「はい?」
「俺を変えてみな。」
「…望む所よ!」

素性なんて知れないし、大体俺はこんなツンケンした女は好きじゃない…はず。でもなんだか
気のせいかもしんないけど、こいつは俺の世界を変えてくれる気がする。再び不敵に笑んだ
手を差し出した。俺は迷わずその手をとり、わざと強く握ってやる。

「いでっ!ちょっと、何すんのよ!!!」
「俺をひん曲がった性格だなんて言った罰だ。」

にや、って笑って優越感に浸ると、むきになったが目を見開いて眉を寄せた。

「いでー!!!!」
「仕返しよ。」

ふんっ、と鼻で笑い手をパッと離した。あいつの力…見かけによらず半端ない。

「じゃあまた明日くるわ。チャオ!」
「へえへえ、こなくてもいいけどなー。」
「絶対くるからね!」

嵐のようなは、さっさと帰っていった。にんまりと緩む顔をそのままに、「変な奴だな」と呟く。
明日から楽しみだ…。あいつのこと、沢山知ってやる。
さて、フェイレンとフェイロンが目を覚ましたらなんて言おうかな。