喪い、失い、うしない――――
総てを失ったら僕はどうなるんだ、なんて時々考える。それでも僕は、進み続けるのだろうけど。




きみを失っても生きていけるだろう、意志があるかは別として




「兄さん、兄さん、ちょっと話がしたいんですが―――」
かい、どうぞ。入っていいよ。」

は、兄であるの部屋へ夜な夜なやってきた。
相変わらず無表情で、何を考えているかわからない。護衛であるカイルとは正反対である。

「どうしたんだ急に、お兄ちゃんが恋しくなった?」

部屋の奥へ誘いベッドに座らせて、自身は紅茶を作りに向かう。
は顔色一つ変えることなく「いえ、それはないです。」とすっぱり斬った。
それに対しては「つれないなぁー。」なんて苦笑いする。

「はい、どうぞ。」

色鮮やかな紅茶を手渡し、の隣に腰掛けた。体重にベッドのスプリングがきしむ。
二人を照らす月明かりは青白く、元々色白い悪く言えば血色の悪いは、病的な儚さを醸し出していた。

「それで、今日はどうしたの。」

が優しく尋ねると、紅茶から目を上げたが暫く間をあけて口を切った。

「もしも、です。もしも貴方を亡くしたら、僕は生きていけるのでしょうか。」

滅多に表情を変えないが、複雑な面持ちになった。
その表情の変化と、の言葉にはひと時言葉をなくした。

「愚かな質問でしたね、すみません。忘れてください。」
「ま、まって!」

すくっと立ち上がって部屋から出ようとしたの手首を慌てて掴む。
彼は怪訝そうな顔をしてを見て、なんです?とやや強めの口調で問うた。

「僕は君を亡くしたら、きっと生きていけないだろう。君は僕の大事な片割れだ。
 それに僕は君が好きだ。だから、君が居なくなったら僕はきっと―――――――。」

余計な事を口走るこの口。それでも、嘘は言っていない。
二人の視線が強く絡み合う。は目で、を促す。 君は、君はどうだ?

「・・・そうですか。貴方は僕が居ないと本当に駄目なんですね。愚かです、実に愚かです。」

二度も愚かだといわれてしまっては返す言葉もない。は黙って俯く。

「ですが、僕も愚かなのかもしれません。僕も貴方が居なければ生きていく自信はありませんから。」

顔を上げたら、がこちらを見ていた。
そのときのは、口許を吊り上げているだけだったが、確かに微笑んでいた。

「――――まぁ、生きてはいけると思います。但し、意志があるかは別として、ですけど。」
「僕はきっと、後を追うと思うよ。」
「どこまでも愚かですね。僕を失ったぐらいで、軍のリーダーが死なないでください。」

明らかに顔をしかめたに、可愛い顔が台無しだよ。と笑うと、ますます顔をしかめられた。
眉間にシワがより、早く手を離してください。と感情の篭ってない声で、掴まれている手首をチラと見た。
は苦笑いを浮かべてごめんごめん、と名残惜しくも手首を離した。

「それじゃあ僕はもう寝ますから。くれぐれも今夜の事は誰にも漏らさぬよう、気を付けてください。」
「うん判った。おやすみ、。」
「はい、おやすみなさい。」

静かに部屋を去ったの後姿を見えなくなるまで見つめて、その背中が見えなくなると
ぷ、と笑い出す。顔の筋肉が緩み、他人が見たら本当に不思議な光景だろう。
一人の部屋で、にやにやと扉を見ている男。実に気持ち悪い。

「好きだよ、。大好きだ――――」

そっと呟いた。















前にアンケートをとった際、ゼラセのような男主と言うのがあったので、面白そうなので書いてみたのですが、むっ、むずかし…!