僕と君との距離はこれくらいが調度良い




「最近どう?」
『どうもこうもないわ。狩魔の名に懸けて完璧な勝利を勝ち取っている。』
「まーだそんなこといってるのか?あんたは相変わらずアホだなあ…。」
『なっ…!に言われるようじゃ、おしまいね。』
「ははっ、まあな。」
『…いつ、アメリカに戻るの?』
「さあな。気が向いたら…か?なんだ、俺が恋しいの?」
『そそそそんなわけ!あるわけない!!ばからしい!!付き合いきれないわね。』

本当は、甘えたいくせに。彼女の屈折しきった性格が、そうさせない。でも、ちゃんとわかってるから。
アメリカに戻ったときは、うんと甘えさせてやろう。電話じゃつんけんした君でも、実際に会えば
ころっと態度が変わるんだ。口は素直じゃないけど、ね。
右って言えば左、前って言えば後ろ、Yesと言えばNo。そんな天邪鬼な、あほな冥ちゃん。
だからこそ、たまには本心を聞いてみたいときもある。

「俺に会いたい?」

微かな希望をこめて、唐突に問いかけてみる。

「………自惚れないで。別に、が居なくたって、平気よ。」
「へえ、あっそ。」

やっぱり、素直じゃない。
こうなったら、意地でも言わせてみせたい。

「なあ、冥。」
『なによ?』
「永遠って、信じる?」

俺がそう聞けば、ふっと鼻で笑った。きっと、小馬鹿にしたような笑顔を浮かべているんだろう。
その様子が、頭の中に鮮明に浮かんだ。彼女との付き合いは長い。どんな顔をしてるかを想像するなんて
俺にとっては容易いこと。それはきっと彼女も同じのはず。俺が今、どんな顔をしてるか、そんなことは
もう、判っているんだろう。

『ばかゆえの戯言ね。』
「戯言?少なくとも、俺は戯言のつもりで言っていないさ。いたって真面目に、君に問いかけている。」
『……。』

黙り込んでしまった。
困ったな。どうしよう。

『………永遠なんて、あるわけない。だって、人は死ぬの。だから、戯言よ。』
「ははっ、冥らしい答えだ。」
は、どう思うのかしら?聞かせてみなさい』
「俺はね、なんだろうな。あるとかじゃないと思う。多分、作り上げてくものなんじゃないかな。」
『面白いことを言うじゃない。』
「ふたりが永遠を作ろうと思えば、きっと作れる。なあ、俺と一緒に永遠を作りませんか?」
『…!?そ、ゆうのは…電話で言うことじゃ、ない。』
「そうかもね。」

今度こそ、ちょっとは素直になるかもしれない。冥は泣き虫だ。誰よりも強がりだ。
寂しくなれば会いたくなるくせに、強がりだから言えない。素直に言えばアメリカまで会いに行くのに。
彼女は損をしていると思う。…素直に言わないと会わない、サディスティックな俺も、俺だけどな。

「冥ちゃん。」
『な…に。』
「俺に会いたい?」

二回目の質問。今回は、希望を込めて。

『………たい。』
「え?聞こえない」
『…っ!ドS!』
「冥に言われたくないね」
『会いたいってば…!う…う…うわあああああああん!!!!!!』
「わっ、お、おい、泣くなって!冥〜?冥ちゃ〜ん?」
『会いにきてよ!うわああああああん!!!!!』
「わかった、わかった!いくから、な?泣くな?」

やーっと素直になったと思ったら、泣いちゃったよ。まったく、泣き虫なのは変わってないな。
でも、泣くほど俺に会いたいなんて、嬉しいよな。待ってろ冥。いま、アメリカにすっ飛ぶかんな。