寝顔は天使小悪魔




さっきまではよかったんだ。さっきまでは、な。
ロイはぶすっとふて腐れた顔で遺跡近くの草むらに座り込んでいた。
草と草との間を通り抜けてやってくる風が頬を撫でて、髪を揺らした。

「ったく・・・。」

春を感じる風に、気持ちが安らいだが、腕にかかる重力を思い出して眉を寄せた。
ちら、と首だけ動かして横を見る。思わず頭を抱えてはぁ、とため息をついた。

悩ましい、非常に悩ましい。と思いつつも赤くなっている顔。
すかさず視線を湖上に聳える城に向けて、暫くじっと見据えた。
すげぇなぁ、と思わず呟いていた。あれが昔からあったなんて思えない。

それでも隣が気になるロイは、またちら、と横を見た。
また顔が赤くなるが、今度は視線を逸らさなかった。じーっと見つめて、再び悩ましげにため息をつく。

「おーい・・・。早く起きろって?」

横に居るのは、ロイに凭れて気持ちよさそうに寝ているだった。
おかげで身動きは取れないし、片腕は使えない。なら起こしてしまえばいい。と思うが
ロイはの彼氏である。彼女の安らかな寝顔を、見たくないわけがない。
まるで寝顔は天使のようで、とても戦争中とは思えなかった。

「ちくしょ・・・。」

とはいえ、実はロイのところから丁度胸の谷間まで見えている。
もやもやと邪な考えが頭をよぎるが、頭をぶんぶんと振って振り払う。
――ダメだ俺!俺は変態じゃない!

様ー・・・一生のお願いだからよ、起きろって・・・」

このままじゃ俺が危ない。と心の中で付け足して、少しだけ身じろぐ。
これで起きてくれないかな・・・?と淡い期待を抱くが、全く起きない。
本当に女王騎士なのだろうか?思わず疑ってしまうが、魔物を次々と薙ぎ倒す
その技とか、身のこなしとかは確かなものだ。

「ロイ・・・」
「お!?」

微かに開かれた口から零れた、自分を呼ぶ声にロイは過剰に反応した。
だが、どうやら寝言だったらしく、瞳はまだ閉ざされたままだった。

「んだ、寝言かよ。」

ぼそっ、と呟くと、それに反応するようにが身じろいだ。
そして何を思ったか、ロイの腕に自分の腕を絡めて、上半身をぴったりロイの腕にくっつけている
体制になった。これにはロイの顔は真っ赤になった。それもそうだろう。
の胸は今、ロイの腕に押し付けられているのだ。
焦るし、動揺するし、どうしていいかわからない。頭も全く機能していない。どうしたものか。

「おおおおい!」

やけに背筋がピンとなってしまったロイは、どもりながらもとりあえずの名を呼ぶ。
だが彼女は全く起きない。困ったものだ、だが腕に当たる感触は嬉しい。

「ろいぃ・・・。」

再び聞こえる寝言。その声は甘い蜜のような、そんな声だった。
ロイの身体はビクッと震えた。今まで聞いたことのなかった声に、酷く焦った。
ちら、とを見れば、とても幸せそうな顔をしていた。

「もっと・・・ほしぃ・・・。」

何をだよ!?
ま、まさか…と、よからぬ妄想をしてしまう。いかんいかん!首をブンブンと振って
妄想を取り払う。

んっ・・・。と声を漏らし再び身じろぎ、先ほどよりもきつく腕に引っ付いた。
いまや全神経が腕に集中しているわけだが、そんなことは露知らず、はまた寝言を呟く。

「かえしてよ・・・・それはあたしのお菓子・・・」

お菓子かよ!!!
矢張り心の中でだが、ツッコミをいれた。それでも、腕にかかる重力は消えなくて
ロイは沸騰寸前だった。無理に起こして今の状況を知られても、気まずい。
かといってこのままだと、ロイ自身が危ない。

どうするべきか・・・。顔は真っ赤だが、真剣な顔をして悩む。
ちら、と寝顔を盗み見すると、変わらず安らかな寝顔で、無意識のうちに口許が緩んでいたが
今は小悪魔のようにも見えた。

「どうすればいいんだよ・・・?」

―――願わくば、俺に策を授けてください。
















アトガキ
なんて中途半端なんだ!
続きとか・・・かきたいなぁ。でもこんなのの続きいらんっていわれるでしょうw
明日から学校です。シャキッとせな!シャキッと!
更新ペースは落ちるでしょう。今まで暇すぎたからバカみたいに更新してましたがw

無邪気な君へのお題

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