ド変態王子は、今日も城を鼻歌を歌いながら徘徊していた。
理由は簡単、女王騎士の一人であるを探すためだ。
は女王騎士であると同時に、の婚約者でもあった。

ーどこだい?」

歩きながら誰へ問いかけるわけでもなく、彼女の居場所を問う。だが、誰も答えない。

「外かな・・・?」

いつの間にか足は、春風そよる外へと向かっていた。




探し物は何ですか?もしかして、私ですか?





「へっくしゅ!」

突如でたくしゃみに、鼻をすすって「うー。」と唸る。誰かが噂してるな、とその誰かを恨む。
はあたりをきょろきょろと見渡すと、再び歩き出した。
今日はミアキスとお茶の約束をしているため、彼女を待たせると何が起こるかわからない。
遅れたときのことを思うと、自然と動く足は速くなっていった。

「あ、よう。!」

声のした方をみると、ロイが陽気な笑顔を浮かべて手を上げていた。
歩く足を止めて、も手をあげる。

「ロイじゃない。どうしたの?」
「いやーちっとプラプラしてた。それよか、お前さんの恋人がお前の事探してたぞ。」
「え・・・本当?困ったなぁ、これからミアキスとお茶なんだけど・・・。」

を放っておいても、後が怖い。あのド変態は何をするかわからない。
ああ、両親はあんなにも立派だったのになぁ。と思うと涙が出てきそうになる。
何がいけなかったのか、母が女王であるが故の愛情不足が原因ではないか。
など色々と憶測を立てるが、それも無意味なこと。はため息をついて、どうしよう。と唸る。

「ミアキスには俺から言っておくから、お前は王子さんのとこにいけよ。あいつに何されるかわかんないだろ?」
「・・・ご尤も。ありがとう、ロイ。恩に着るわ。」

はロイに深々と頭を下げてを探しだした。
は何処に居るだろう?婚約者の顔を思い浮かべて城をくまなく探した。

数十分経ったが、一向には見つからない。
時間が経てば経つほどの焦りはます。何が何でも、を見つけ出さねば。
あのド変態にどんなことをされるか、わかったもんではない。

「外かしら?」

城の中はもうイヤというほど探したので、残るは外しかない。
は足早に駆け出した。



ー?」

釣り場へきたは、さらさらの銀髪を捜してきょろきょろ見渡す。
いない、いない――――いたっ!!!
が、いた。ただし、簡素なつくりの釣り場に寝そべっている。どうしたのだろう?
は慌ててのもとへ駆けつける。

慌てて顔を覗きこむと、瞳はとざれており、胸は規則的に上下している。
つまりは、寝ている。は首をかしげる。

「寝てる・・・?」

あのが、こんなに人が近づいても寝ているとは珍しい。
は珍しいものを見るようにの寝顔をいろいろな角度から見て、にや。と笑う。
なんだか勝ち誇った気分だ、とは思った。

寝顔のはとても幼く見えて、同時にとても可愛らしい。母性本能をくすぐる表情だ。
とてもド変態には見えない。いつからド変態になったのかな、とどうでもいいことを考える。

だが、次の瞬間―――

「ひゃっ!」
「やーっと見つけた。」

顔を覗きこんでいたの身体が不意にに押し寄せられた。
冷静になって自分の腰らへんを見れば、どうやらが引き寄せたらしい。
の顔を見れば、先ほどまで閉ざされていた瞳はぱっちりと開き、勝気に光っている。
至近距離で見るの顔はやはり整っていて、不意に恥かしくなった。

「ごめん、途中から起きてた。」
「・・・最悪だわ!」
「ごめんってば、でもってば無防備に僕に近づくんだもん・・・。襲いたくなっちゃうよ。」
「ばか!」
「ばかで結構。でもこっちはヤる気満々だから、こんなに密着してて・・・ねえ?」
「ねえじゃないわよ!」
「誘ってるの?」
「誘ってなーい!!!」

この後が何をされたかは、誰も知らない。