破天荒なやつ来る!
-猿飛佐助と俺-
今日も武田信玄の息子は、団子をパクつき茶を啜っている。
戦?ナニソレオイシイノ?とでもいいそうな勢いだ。
「ちゃん!何食べてんの?」
「げ、佐助…見てのとおり団子だけど」
佐助の登場にあからさまに顔を顰めた。
「俺様にもちょーだいよ!」
満面の笑みでねだる佐助に、ハッと鼻で笑い、見下すような笑みを浮かべる。
「だーれが佐助なんかにあげ…」
「犯すよ」
「あげないやつなんていないよ!はははっ!喜んであげる!」
佐助の一言にの意見が180℃変わった。
「さっすがちゃん!じゃ、あーんてしてよ。」
「バッ!笑わせるんじゃねぇよ!自分で食えアホ!」
何を言い出すんだこのアホ忍(アホにんと読んでやってください)は!
「え、聞こえない。犯してほしい…?やだなぁちゃんてば積極的!」
「何処をどう聞き間違えた!」
「え、俺が好きなの…?」
「誰が言った誰が!…しゃーないな、今回だけだからな」
最初からこれが目的だろうと察し、ため息をついた。
団子を一つ持って、わくわくと待ち構える佐助にゆっくり持っていく。
だが、このまま黙って佐助の言いなりになるのは、的にしのびがたい。
は団子を佐助の口の手前で止める。佐助は目を閉じて口を開いている。
(ははっ、間抜けヅラ!ざまぁねぇな!)
佐助の顔を見て、声を立てずに笑った。肩を小刻みに震わせ、ニヤリとした顔。
今この瞬間を佐助に見られたら、本気で襲われるだろう。
そのとき、悲劇は起こった。
佐助が片目を開いて、様子を伺ってきたのである。ゲ、の顔がそのままで凍りついた。
打って変わって状況を理解したらしい佐助が、にんまり笑っている。
「…へえ、ちゃんってば、俺のキスしてるような顔見て楽しんでたんだ?」
「へ!?ち、ちが…!恐ろしいほど勘違い!」
「かーわいっ!なになに 、じゃあ俺様とキスしたいってわけか?」
駄目だ、こいつは理解してなかった。しかも、完全に話が自分のいいほうへと進んでる。
なんでこんなにアホなんだろ、なんでなんでなんでなんで。
「無言は肯定、それじゃいただきまー…」
「待てよおい!ふげー!」
徐々に近づいてくる佐助の顔。手首が捕まれることによって自由が奪われた。
いっそこのまま初めての接吻を奪われても良いかもしれない。佐助なら…。
「待て佐助!進むな危険!」
「だ、旦那?」
本当に接吻寸前、何者かによってその行為が止められた。佐助が”旦那”と言うことは
「ゆ、幸村!」
「はははは破廉恥どころか、そういう趣味だったのか!」
顔を真っ赤にして幸村が喚いた。ご、誤解だ幸村!
「幸村!待て!これはな、俺は無実なんだ!襲われてて!!」
「あーらちゃんってば、最終的には受身の体制だったジャン。」
「うううううるせえよ!ど、どこがだハゲ!」
どもる=図星。この等式が成り立つは、どうにもこうにも隠し事が出来ない
体質らしい。幸村もそれは、長年付き合っていくうちに判って行って、嘘かどうか判断すること
ができるのだ。つまり、は佐助との接吻を最終的には許したことになる。
「め!それがし…見損なったでござる!」
「幸村ぁー!違う違う違う幸村ぁー!くれぐれも親父には言いつけるなよ幸村ぁー!」
走り去ろうとする幸村の誤解を解こうと叫んだが、無理で、最後には信玄には言いつけないように
叫んだ。いっそ泣いてしまいたい。どうしてこんなことになったのか。寧ろ消えてしまいたい。
「旦那に誤解されたなー。ま、いっか。」
「なんでそう楽観的なんだよ!」
「本当に恋人になっちゃえば良いじゃん。」
「ボケか!?ナスか!?俺はいやだ!!」
「またまた〜照れちゃってさ!じゃあさ、さっきの続きしよう。」
佐助の暴走は止まらない。