私の恋人、は誰もが認めるド変態。え、これが王子でいいの?って思うほどのド変態なのです。
そのド変態に求愛されてもう何年になるか、私は何年目かの時OKをした。勿論、自分の気持ちに素直に
なっただけで、同情からとかそういうものではない・・・はず。




背伸びしてあごにキス




「今日も可愛いね、おはよう!愛してるよ!」

朝から変態に遭遇したは、あからさまに顔をしかめて小さくおはよう、と呟いた。
本当に恋人同士かは謎な部分ではあるが、とりあえず二人は愛し合っているのは確か。だと思う。

「今日は何する?釣り?それともストレス発散に行く?」
「軍のリーダーがそれでいいの?」
「いいのいいの、うちには優秀な影武者が二人居るからね。」

だからって、デートのために軍事を休んでいいのでしょうか。止めない人たちもどうかと思うが。
はため息をついて、「ちゃんと自分の仕事やってきな。」と呆れたように言う。
が、バカ王子は満面の笑みで「照れちゃってもう!」なんて騒いでいる。

「まあ、昼間だけど、一発いっとく?」
「死ね!!!」

顔を赤くしてその場から立ち去ろうとするの腕をすかさず掴む。極上の笑顔。
は顔を引きつらせて離して、と目で訴える。だが、は笑顔を崩さずに首を横に振る。
目が怪しく光る。え、目力?などとごちゃごちゃな脳内で考えた。多分違う。

「何で逃げるの??」
「に、逃げてないよヤダなぁ!」
「そーお?でも、が言うならそうだよね!んじゃ、早速僕の部屋へ・・・」
「いっぺん死ね!」
「勿論、何の心配も要らないから。後の事はにでも任せればいい、さあ行こう!」
「クソ兄貴!てめえ何いってやがる!!」
は黙ってて」

丁度通り過ぎようとしたと兄弟喧嘩を始めようとしたので、その隙を見て逃げ出そうと試みたのだが
握った手を全く離してくれない。ち、ちきしょー!

「それじゃあそろそろ行こうか?」
「てめっ兄貴コラ聞いてんのか!?」
「はいはい、じゃあリオンよろしくね。」
「ハイ!王子!じゃあ王子、行きますよー」
「行きますよって何処だよ!リオンテメー!こんにゃろー!」

の不敵の笑みと共に、リオンがを何処からか出してきた縄で縛り、まるで荷物を引きずるように
一国の王子の一人であるを何処かへ連れて行った。

「邪魔者はいなくなったね」

相変わらずの不敵の笑み。引きつる笑顔は修復不可能で、崩壊寸前。
握られた手に力が込められた。それと同時に深く心臓が脈打つ。体中の水分が蒸発し始めるようだ。
身体を抱き上げられ、の自室へと運ばれる。ヤられる――――!

「ま、まって!」

反射的に声を上げる。の足がピタ、と止まり「どうしたの?」と尋ねられる。

「とりあえずおろして!」
「いいけど、逃げないでね?」

逃げるわけがない。逃げたら何されるかわからない。そんな命がけの行為はしないのだ。
黙って頷くと、は静かに地面へ下ろしてくれた。

。」

精一杯の背伸びをして、へキスをしようとする。だが、どう足掻いてもあごまでしか届かず
あごにキスをした。
背伸びをやめて、をちら、と見る。

「今日はこれで勘弁して欲しいな?」

小首を傾げて尋ねると、が途端顔を赤くした。

「・・・・っ今日だけだからね?」

これは、照れてるんだろう。
からのキスなんて滅多にないので、ド変態もドッキリ。というわけだ。
そそくさ去り行くの背中を見て、はこう呟いたと言う。

「やっぱり、可愛すぎる・・・。」