好きになってごめんね




今日も縁側でのんびりお外を眺めています。信長殿、相変わらず強いです。
あ、濃姫様だ。相変わらず美しくて…女の私でもうっとりしてしまいます。
蘭丸君は…何処かしら?きょろきょろ見渡しますが、それらしき姿はありませんでした。

「こんぺいとう、持ってきたのになぁ…。」
「わぁ!様、それこんぺいとうですか!?」

突然後ろから声がかかりました。蘭丸君です。ははぁ、後ろに居たとは…予想外でした。
私はにっこりと微笑んで、はい。と頷きました。蘭丸君は、こんぺいとうが好きらしいので
今日は蘭丸君のために城下町で買ってきたんです。(見張りつきですけど)
勿論、このことは内緒です。

「あの、蘭丸君。一緒に食べませんか?」
「いっ、いいんですか!?」
「はい。私、蘭丸君と一緒に食べたいです。」

私がそういうと、蘭丸君は少し照れ笑いを浮かべて
「僕も、様と食べたい。」といわれました。

「甘いですね…。」
「ですね。」

私が率直な感想を漏らし、蘭丸君がそれに頷きました。
信長様の訓練の様子を眺めながら、こんぺいとうを口に放りこみます。

「信長様、強いですよね!」
「はい、そうですね〜。強くて、本当にびっくりします…。」

魔王とも呼ばれる信長様ですが、心根はとてもお優しい方だと言うことをは知っています。
捕虜である私に何不自由ない生活を送らせてもらっているし、そばを通ると話しかけてくれます。
織田軍は、本当にお優しい方ばかりです。

「私は、幸せです。こんなに不自由ない生活をさせてもらって。蘭丸君にも出会えて。」
「ぼっ、僕も様と会えて幸せです!もとは出会うはずのなかったのに…。」
「そうですね。でも、これも運命なんでしょうね。蘭丸君、好きですよ。」
「…っ僕もです!」

まだまだ子供だけど、心は一人前の蘭丸君。そんなところに惹かれたんでしょうか。

「丸!」
「あっ、はーい!信長様!」

信長様に呼ばれて、蘭丸君がすっ飛んでいきました。
残された私は、信長様と蘭丸君の様子をぼんやり眺めます。怒られているわけではなさそうです。

「あら、ちゃん?」
「のっ、濃姫様ぁ!」

私のもとに、濃姫様がやってきました。濃姫様は私の…いえ、女の憧れでしょう。
綺麗なお身体で、とても知性溢れていて、お顔もこの世のものとは思えないほど整っていて
私なんかとは比べ物になりません。…比べる方が間違ってますよね。

「あら、そんなに驚いて、ごめんなさいね?」
「いえいえいえいえいえいえ!あああの、こんぺいとうどうですか!?」
「まあ、ありがとうございます。」

優雅に微笑まれる濃姫様に、私は顔が赤くなってしまいました。
信長様に、濃姫様、とてもお似合いです。二人並べば、絵になります。
私と蘭丸君もお似合いだと言われるように頑張りたいです。

「今日は蘭丸君と一緒じゃないのかしら?」
「あ、蘭丸君なら信長様と何かお話してます。あちらで、ほら…」
「本当だわ。何話してるのかしらね? ――あ、そろそろ行くわね。またね?」
「はいっ!またお話しましょうね〜」

去り行く濃姫様に手をいつまでも振り続けました。いつでも美しい濃姫様に乾杯です!
あ、どうやら信長様と蘭丸君は話し終わったようです。駆け足で私の許へやってきました。

「ただいま、様!」
「おかえりなさいませ、蘭丸君。」

私の隣に腰掛けた蘭丸君の手に、私の手を重ねました。
こうしてれば、いつまでも蘭丸君と一緒にいれるような気がします。

「信長様がね、僕と様の関係…知ってたんです。」
「ええっ!?本当ですか?…流石信長殿です。」
「それで信長様が、祝言をあげたらどうだって?」

しゅ、祝言!?の、信長様イキナリ…っ。それはとても望ましいことです。
ですが、お義父様のお話を聞かないと決められません。

「勿論、信玄殿には話をつけておくっていってました!」

私の心を見透かしたように蘭丸君が言ってくれました。
祝言…ですか。考えてもいませんでした。蘭丸君と、お結婚…。森になるんですかぁ。
なんだか、想像しだしたら止まりません。

「結婚、ですかぁ。まさかこの年で出来るとは思いませんでした。」
「あの、そこでですね。様?」
「あ、はい?」
「…改めて、僕と結婚してくれませんか?まだまだ未熟な僕ですが、様を想う気持ちなら
 信玄殿にも負けません。様…愛してます。僕の心は、既にあなたのものです。
 僕が様を幸せにします。僕と二人で、未来を切り開いていきましょう。」

大人顔負けのことを言う蘭丸君に、私の胸は高鳴りました。
初めて受けたプロポーズ。精一杯の愛の言葉。私は胸を押さえて深呼吸をします。
返事なんて、決まってます。

「私でよければ、結婚しましょう?利家殿、まつ殿の夫婦に負けないくらいの最強夫婦になりましょう!」
「勿論です!僕、強くなります。だから見守っててください、様。」

重なっていた手を、蘭丸君が持ち上げて、私の手の甲に口付けをしました。
照れます、照れます、照れます…っ

こうして私たちは結婚することになりました。
お義父様、私は今幸せです…。