望ましくない光景





蘭丸君は、とってもおモテになられるんです。
可愛く、強く、天真爛漫な彼は年齢問わず人気なんです。
そんな様子を、私は遠巻きに見てため息をつきます。私が割って入れるところではないから。
今日も彼は年上の女性にチヤホヤされて微笑んでいます。…私はため息が絶えません。

彼女たちは私のことを嫌っているでしょう。わかります。
だって、余所者の分際で蘭丸君と恋仲なんですから…。

ぼんやりと蘭丸君たちを見ていましたが、やがて耐えられなくなり私はその場から逃げるように
立ち去りました。…自分の恋人が、異性に囲まれている所なんて見たくないです。

「はあ…」

人気のない所で、ため息をつきました。蘭丸君はどうしてあんなに魅力的なんでしょうか。
私なんかが一緒に居てはいけないような気さえしてきます。一体、何処を気に入って
恋仲になったのでしょうか。本当に疑問です。彼からの告白を頂いたときは、本当にびっくりしました。

様…好きなんです。僕、様のことを幸せにしたいんです。』

はにかんだ笑顔と共に告げられた言葉は、私の胸にストレートに打ち込まれました。
まさか、蘭丸君が自分のことを好いているとは、思いもしませんでした。
私も蘭丸君に惹かれていたので、私は頷いて「よろしくおねがいします。」と頭を下げました。

「蘭丸君…。」
「はーい、なんですか?」
「らららら蘭丸君!?どうしてここに!?」
「えへへ、様がここへくるの見えたからつけちゃいました。」

えへへ、って蘭丸君。可愛すぎです。私は胸がキューンとなるのを感じました。
ということは、先ほどまで取り巻いていた女性たちはどうなったのでしょうか?

「ああ、あの人たちなら僕が様のところいってくる、って言ったから。」

私の心を見透かしたように蘭丸君が付け足しました。

「そうなんですか。なんだか悪いですね…。」
「でも僕、様と一緒にいたいですから。」

屈託ない笑顔と共に蘭丸君が言いました。

「ら、蘭丸君のバカー!」
「え、様?」
「そんなこと言われたら…はときめいてしまいますっ。」
「…、様。目を瞑ってください」
「はい…」

蘭丸様に言われたとおり目を瞑ります。ドキドキ、ドキドキ。視界の閉ざされた世界
では心音がやけに響き渡ります。もしかしたら、もしかしたら…接吻を…?

と、妄想したとき、本当に私の唇に彼の唇が当てられました。数秒後に離されて、
私が顔を赤くして照れている間におずおずと背中に手を回されて、私と彼は密着しました。
年齢の割に引き締まった肉体だと言うことが判り、ますます照れてしまいます。



あんな可愛い顔をして、ときめいてしまいます。なんていわれたら僕だって大人しく出来ない。
僕は目を瞑った様のその唇に自分の唇を当てて、所謂接吻をした。
数秒間様を堪能し、名残惜しいけど唇を離す。僕より小さい様は、とろんとした表情
で僕を上目遣いに見つめる。や、やばい…!僕にだって理性と言うものは存在するし、我慢だって
できる。けど、愛しい人にこんな顔で見つめられては僕だって黙っちゃ居ない。

震える手で様の背中に手を回し、僕らの間に空間なんて存在させない。と言う勢いで
密着した。様の胸が僕に当たり、そのやわらかい感触に眩暈しそうになる。
様の手も僕の背中に回され、そのまま抱き合った状態が続く。



「らんまるくん…好き、です。」
「僕もです。妻にしたいくらい好きです…。」
「ふふっ、私も蘭丸君の事夫にしたいです。」
「じゃあ、僕の様になってくれますか?僕だけの様に。」
「もとよりそのつもりです。」

そういうと、蘭丸君は嬉しそうに笑い、「やった!信長様に知らせないと!」と言った。

「では私もお義父様に知らせなければいけませんね。」
「それじゃあ様、甲斐に帰るんですか…?」
「え、はい。でも信長様が許してくれるかしら…?」
「使いを送ればいいんじゃないですか?」
「ああ、なるほど。蘭丸君頭いいですね!」

身体を離し、今度は手を繋いで信長様の所へ向かった。何処に居るだろうか?
手の温もりが心地よい、午後の出来事だった。













腹黒いと噂の蘭丸君だけど、伏せといて!笑