恋する笑顔に恋をした




僕、蘭丸。信長様に拾われて以来、ずっと信長様一筋!だったけど、最近
気になる人ができた。名前は、。甲斐の虎の義理の娘。
は、信長様に招かれて僕たちの城へやってきている。親睦のためだ。
そして現在縁側の僕の隣で、金平糖を美味しそうに口へ運んでいる。

「金平糖美味しいですね。こんなに美味しいとは思いませんでした。」
「へえ…僕は1000人斬らなきゃくれないんだよ。信長様、には甘いのかな?」
「まあ、そうなんですか?なんか悪いですね…。いります?信長様に黙ってますよ。」
「…う、でも、信長様に悪いから、いいや!」

信長様に秘密ごとなんて…絶対駄目だ。僕は僕に言い聞かせた。
…横顔も可愛くて、僕は少し見とれてしまった。いいなあ、甲斐は。
濃姫様は美しいけど、は可愛い。時々、美しい表情を見せる。
甲斐を滅ぼせば、はこっちへくるかな?なんて、時々考える。

「どうかしました?」
「…え、いや。なんでもないよ。」

しまった、大分ボゥっとしてしまったらしい。
が首を傾げている。僕は照れ笑いを浮かべつつ、手を横に振った。

「それにしても、暑いですね。」

ぱたぱたと手で扇ぎ、風を送っている。よく見れば、額から一筋の汗が伝っている。
そういえば暑いな。…実の所、に夢中で暑さをあまり感じなかった。
暑さも、の前では勝てない。

「だね…そうだ、ちょっと待ってて!」

僕は一瞬にして閃いた。そしてそれを行動に移すために、急いで駆け出した。
が後ろで僕の名前を呼んだけど、一度振り返り手を振り上げて目的地へ向かう。



「ただいま、。」
「お帰りなさい、蘭丸君。」

僕は、濡れた布を持ってきてのもとへ戻ってきた。
急いでの額にかかる前髪を払い、そしてそこへ濡れた布を貼るように載せた。

「ひゃっ、冷たい…。はぁ、気持ちいいです…。蘭丸君、ありがとうございます。」
「いやいや、お安い御用だよ。…ちょっとしつれーするよ。」

の額に張り付いた濡れた布に、自分の額もピタッとくっつけた。
顔と顔が間近にある。凄いくらい近い。もう少しで接吻できてしまう。

「らららら蘭丸君!ち、近いですよう…」
「ね?近いね。」
「ね、じゃないですよ…もう、恥かしいです…。」

綺麗だなぁ、ってまじまじと思う。こうやってどんどんと好きになってく。
ある意味恐ろしい。と言う女性は、とても奥が深く、味があり、金平糖みたいだ。
僕は額から離れ、もといた縁側へすとんと腰を下ろした。

は、好きな人いる?」
「え?…どういった好きですか?」
「ええと、異性に対する…かな?」

気になってたことを、口にしてみる。これで僕だったら万々歳だけど、現実そう甘くもない。
の照れてる姿を見て、ドキンと心臓が深く脈打った。

「ええとですね、内緒ですよ?」
「うん。」
「真田幸村って言うんですけどね、…その、好きなんです。」

そういって遠くを見つめて笑う笑顔に、僕の胸は締め付けられた。
あの赤いのが好きなのか…。熱血で、お館様馬鹿で、赤い奴。
一瞬殺してしまおうかと思った。殺してしまえば、は好きじゃなくなると思ったから。
でも、それではが悲しんでしまう。好きな女を悲しませるのは、最低だ。
僕は、恋する笑顔さえ美しいと思ってしまう。

恋する笑顔に恋をした。

よく判んないけど好きと言う感情が深まったと言うより、恋をしたんだ。ドキドキと心臓が煩い。
恋する女の子の笑顔は、美しいんだ。この笑顔を、僕を想ってして欲しい。
が赤いのが好きなら、僕が振り向かせて見せる。

待ってて。僕を、好きにさせて見せるよ。

、その笑顔とっても可愛い。好きになった。」
「へ?」
「僕、のこと好きになったの。赤いのに負けないから、さ?」

このとき僕は、を狙う輩が甲斐に沢山居ることを知らなかった。