間違えた言葉




なんであの時、を一人にしてしまったんだろうか。
なんであの時、の様子を見に戻らなかったんだろうか。
なんでこんなことになってしまったんだろうか――――。

…」

自分の抱きしめているこのは冷たくて、死んでいるみたいだった。
死んでなんてない…。死んでるわけないんだ。蘭丸は現実を認めようとしなかった。

「ごめんね、。僕のせいだ。…女の子一人でこんなに持ちこたえられるわけなかったもんね」

少し考えればわかること。でも、あの時は信長が心配でそんなことに気づけなかった。
完全に僕が悪い。許してなんて言わない。だから、僕を叱ってほしい…。
「蘭丸君のせいですよ!もうっ」って、いつもみたいに拗ねた顔して叱ってほしい。

「うっ…あっ…うぅ…!!!」

涙がでてきて、嗚咽交じりに彼女の名前を呼ぶ。涙がの頬に落ちて、そして零れた。
口から溢れている血が、乾いていて固まっている。何時間経ったんだろう…。
漸く現実を受け止め始めた蘭丸。

「丸…。」
「!!…のぶ…なが様ぁ!!」
が、死んだのか。」

人の死なんかじゃ悲しまない信長が、の亡き骸を見て顔をしかめている。
信長にとっても、と言う少女の存在は大きかったのだろう。濃姫が見たらどうなるだろうか。

「手厚く葬ってやれ…。」
「蘭丸は初めて信長様に逆らいます!イヤです…!土に埋もれていては、が苦しいです!」

信長が黙り込み、ため息をついた。

「大切なもの、それはなくして初めてその大きさに気づく。」
「…も昨夜いっていました。大切なものって言うのは、なくなってから気づくんだ、って。」

昨日までは、当たり前のように笑いかけてくれた
それが、もうあの笑顔を見ることは叶わない。そして最後に見たあの笑顔も、時の流れと共に
色あせて、霞んで行き、思い出せなくなってしまうのだろう。
それならいっそ、と同じ所へいきたかった。時を越えて、を愛するんだ。

「どれだけ悔やんでも、同じことよ。現実は変わらん。良くも、悪くもな。」

そう、現実は変わらない。

「もっと、もっとのために何かしてあげたかった…。」
「どれだけ尽くしても、ああすればよかった。こうすればよかった。と思ってしまうのは人間の性だ。」

出来るだけ自分の気持ちを素直に伝えたけど、まだまだ伝えたりない。
もっと言いたかったこと、やりたかったこと。沢山あるけど、もう実行することは叶わない。
愛しき妻は、もうこの世を去ったのだから。

「丸よ、何故支援に来たのだ?」
「…信長様が危なかったので。」
「戯けが。我は天下人だ。だが、は一国の姫だ。…守るべきは、後者だろう。」
「ですが、蘭丸の主君は信長様です。」
「お前にとってはその程度の存在なのか?ん?」

そう問われては黙り込んでしまう。本当は、のそばについてあげたかった。
だって、そばについていればは死なずに済んだのに。を守るって決めたのに。
それでも、主君を守るのが定めだと言い聞かせた。それがいけなkった。

「祝言をあげるというのは、伴侶を命に換えても守り抜く。と誓うことでもあるのだぞ。」

いっそかわってあげたかった。痛かったよね、の頬を撫でて唇を噛み締める。
信長様の言うとおりだ。僕は、間違っていた。

「ごめんね…ごめんね…。」

謝っても謝りきれない事を、蘭丸は只管謝り続けた。
信長は蘭丸を一人にしてあげようと思い、そっと立ち去った。

「僕さ、のことすげー大切に思ってて、これ以上大切なものなんてならないくらい大切にしてた。
 でも、違った。の言うとおりだった。なくしてから、もっと大切なことに気づいた。
 目を離しちゃいけない、常に護る対象だってことに気づいた。主君よりも大切な人だって気づいた。
 でももう遅いよね。いっつも気づくの遅い僕でごめん。でも、これだけは言わせてくれないかな?」


「愛してる―――――今までも、そしてこれからも。」

もうが笑うことも、泣くことも、怒ることも、動くことも、瞬きすることも、呼吸することもない。
それでも、僕はを思い続けるから。時々でいいから僕のこと思い出してくれよ。
出来れば、何処からでもいいから僕の事見守っててくれよ。信長様のために一生仕えるからさ。
僕が死ぬまで、待っててくれるかな?そしたら一緒に手を繋いで、生まれ変わろうね。
それから、また結婚しよう。今度は何よりも君の事を大切にするから。
























はー悲しい系目指したけど、全然涙でませんwさすが私。
えーと続編作ってみました。






「戦国高等学校からやってきました。武田です。どうぞよろしくおねがいします。」

転校生がきた。何処かでみたことあるような顔。だけど、思い出せない。
多分、思い違いだろう。でも、何処かで繋がっているような…そんな感じが拭いきれない。

「それじゃあ武田は、森の隣な。」

転校生は僕の席の隣に座ることになった。近くで見れば見るほど何処かで見たことある。
心の深い所で繋がってる感じがするんだ。なんて、言ったら気持ち悪がられるかな。

「よろしくね、森君。」
「蘭丸でいいよ。僕もって呼ぶし。」
「うん!それで蘭丸君。私、貴方と何処かであったことあるような気がするんだけど…気のせいかな?」

驚いた。彼女のほうも面識があるらしい。
蘭丸は何度か瞬き、「僕もだよ。」と微笑んだ。

「なんかね、心の深ーいところで繋がってるような気がするの。…なんて、引いた?」

そういって笑ったに、蘭丸はプッと吹きだした。
顔を赤くして「ちょっとー」と唇を尖らせた。

「僕もなんだ。不思議だね。前世で繋がりがあったりして。」
「そうだったらロマンティックね。」

くすくす笑いあって、先生から「話を聞け!」ととばっちりを受けたのは言うまでもない。