ゆっくり開いて、淫らに絡めて、そして愛を囁いて




「姫ー!お久しゅうござりまする!」
「まあ幸村様、こんにちは!本当にお久しぶりですね。」

武田と織田の休戦協定が結ばれてからと言うものの、織田領に甲斐から真田幸村だったり
猿飛佐助だったり、更には武田信玄まで来たりする。
を探して、見つけてはデレデレとする。そんな様子を険しい顔で見つめる蘭丸。
本日のお客様は真田幸村。を見つけるなりすっ飛んできた。まるで犬みたいだ。

「まあまあ幸村様、この暑い中のために…本当にありがとうございます。」
「あああ当たり前でござるよ!姫に会うためなら何処へでも…!」

さりげなく何言ってんだ赤いの。今すぐ飛び出してを掻っ攫いたいけど、そんなことしたら
が悲しむからやらない。(前に一度、幸村が来たときに攫ったら、「酷いです」と言われ
その日から1週間口を聞いてくれなかったことがあるからだ。)

「お館様も来ようとしていたのでござるが、急用が入ってしまいこれなかったでござる…。」
「まあ、お義父様も?残念だわ…でも、幸村様がきてくれたので、嬉しいですわ。」
「うおおおおお!感激でござる!姫ェエエエエェェエ!何故蘭丸殿に嫁いでしまったでござるかああ!
 それがしは…!それがしはぁ…!」

このままでは愛の告白をしかねない幸村。少し焦りを感じた蘭丸は駆け出そうとしたが、
「蘭丸君。」と濃姫に呼びかけられて止まった。

「なんですか?」
「大丈夫よ。何も心配しなくても。ちゃんだって、故郷の人と水入らずで話したいんじゃない?」
「ですが、蘭丸は心配です!の事は…信じてますけど。」
「信じてるなら、見守ってあげなさい。蘭丸君ならできるわ。」

濃姫様に言われて、少し落ち着きを取り戻した。そうだ、僕はを信じてるんだ。
大丈夫、なら大丈夫。そう言い聞かせてるうちに、濃姫は何処かへ去っていった。

「それがしは…!姫の事が…!好きでござる!!」
「勿論。私も好きですよ。」
「「はあああああ!?!?!?」」

蘭丸の声と幸村の声がシンクロした。はただにこにことしていて、一体何を考えているのか
判らない。蘭丸は駆け出していた。目指すはのもと。

「ほ、本当でござるか…?」
「何を言っているんですか、当たり前ですよ。」
「待ちな!」

蘭丸が二人に割ってはいる。は相変わらずの笑顔で「あ、蘭丸君。」といった。
の笑顔に毒気を抜かれそうになるが、蘭丸はを抱いて(俗に言うお姫様抱っこだ)
逃走した。置いてかれば幸村は、自分のことを好きといったを思ってポカーンとした。

「姫が…す……」

ツーと鼻血が流れて、ドタッと倒れた。近くにいた侍女が駆け寄ってきて、まあ大変。
と担いでいった。



「蘭丸君?お、降ろしてください!はずかしいです」
「ヤダ。」
「蘭丸君のイジワル…。」

とてとてとを抱いて走る蘭丸は、ただいまご立腹中なので、相手がでも
口数が少なくなっている。
人気がない森の茂みにやってきて、漸くを降ろした。

「どういうこと…?」
「はい?」
「何でさ…は、あの赤いのが好きなの?」
「あ、はい。」

さも当然とでも言うように頷いたに、蘭丸は目の前が暗くなる。
いつから、もしかして最初から?僕とは…遊びだったの?結婚までしたのに。
怒りよりも悲しみがこころを占めた。

「なら、何で僕と祝言をあげたの…?」
「そ、そんなの蘭丸様を好きだからに決まってるじゃないですか!」
「でも、赤いのが好きなんだろ?」
「へ?…ぷっ、く、ふふ、あははは!」

一瞬きょとんとしたが、やがて面白そうに腹を抱えて笑った。僕は顔を赤くしてただ立ち尽くす。
何が可笑しいのかちっともわからなかった。それとも、バレたと言うことでもう隠してても無駄だと
思い開き直った故に笑い出したのか。

「そ…ふ…ら…ふふ。あのですね、誤解してます蘭丸君は。」
「え?」
「幸村様への好きは、お友達としての好きです。手を繋いだり、接吻したり…えと、それ以上
 のことも、蘭丸君としかじゃないとイヤです。」

なんてことだ、これじゃあ笑い種だ。蘭丸は顔を更に赤くしてそんなことを思った。
そうだよ…そうだよ、が僕の事好きじゃなくなるなんて、考えられない。考えたくもない。

「僕、本当に心配したんだからね。」
「すみません。もう誤解を招くようなことは言いませんわ。」
「うんわかった。じゃあ、罰として、から接吻して?」
「ほええええ!?お、お恥かしいです…」
「僕を誤解させた罰だよ?」

笑顔でそういえば、はうー、と唸り暫し葛藤した。
少しして、わかりました。と頷き、続いて目を瞑ってください。と言った。

「うん、いいよ。」
「はい…ではいきます。」

背伸びをして、蘭丸と同じくらいになり、蘭丸の肩に手をついてバランスをとる。
ゆっくり、ゆっくりと顔を近づける。近くで見る蘭丸君もカッコよく、思わず見とれる。
だけど、本来の目的を思い出してもっと顔を近づける。やがて、唇が重なった。

「…ありがとう。」
「いえ…。」

唇を離し、ストンと踵を下ろすろ、蘭丸のてのひらがの頭を撫でた。

「じゃあ、僕からも。」
「へ?」

顎を持たれ、しっかりと角度を固定された。蘭丸のニヤ、と言う笑顔が見える。
ザワ…と森が揺れたと思ったら、蘭丸の唇がの唇と重なった。

「ふぁ…ん…んぅ…」

蘭丸の舌がの口内へ侵入したがるので、はゆっくりと口を開く。
の舌へ蘭丸の舌が絡み、淫らかな音が生まれる。
力が抜けないように蘭丸の首に手を回し、されるがままになる。

「これは僕からのおかえし。」
「…っ、ありがとうございます…。」

ふらふらと力が入らない足。蘭丸に寄りかかり、どうにか立っている。
蘭丸はを再び”お姫様抱っこ”して、部屋へと運ぶ。

「蘭丸君…。」
「何??」
「愛して、ます。」

一言、愛を囁かれて不覚にも蘭丸の顔はボッと赤くなった。