君になら世界を任せてもいい




私は、両親を戦でなくしてから、ずっと信玄様に養ってもらいました。
最初は信玄様と呼んでいましたが、それではなんだかもどかしい、と信玄様が言ったため
お義父様、と呼んでみました。すると、なんだかくすぐったいな。と微笑まれました。
この人へ一生ついていこう。必要ならば何処へでも嫁ごう。そう思った。

ですが、私は出会ってしまったのです。
森蘭丸君に。最初は気に留めてませんでしたが、次第に惹かれていったのです。
因みに、蘭丸君は私の夫になります。愛しい愛しい私の旦那様です。

蘭丸君に「好き」と告げられたときはなんとも思ってなかったはずなのに、ドキドキと
心臓が激しく打ち、顔がボッと火照り始めた。その日から、私は蘭丸君を意識し始めました。

それから、再び蘭丸君から告白を受けました。
私は迷わず頷き、こうして私たちは恋仲になりました。それから、すぐに結婚へ向かいました。

戦へ向かうときは蘭丸君の活躍を祈って城にて待っています。
必ず帰ってきてくださいませ、と頬へ口付けをして見送ります。
すると決まって蘭丸君は照れたように微笑み、大きく頷くんです。

そして、戦地へ向かう蘭丸君の後姿を見守り、そのままその場所で蘭丸君の帰りを
待ちます。そうすると、やがて蘭丸君が戻ってきて、勝ったよ!って私をぎゅっと抱きしめるんです。
その抱擁が心地よくて、うっとりしてしまいます。お疲れ様です。と耳元で囁くと、今度は
蘭丸君から口付けをしてくださるんです。

私、思うんです。蘭丸君になら、日本を…いえ、世界を任せていいんだって。
前はそう、お義父様なら任せられるって思っていました。お義父様のためならいつでも命を捨てられる
と思ってました。一度は死んだと思っていますから。
ですが、彼と一緒に過ごしていくうちに、その考えはゆっくりゆっくり変わっていきました。

「蘭丸君…。」
…。」

目の前に居る私の愛しき夫は、形はまだ子供ですが、こころは立派です。
信長様のために、と努力する蘭丸君。私のこころは、いまや蘭丸君に根こそぎ持ってかれています。
そして身体も…彼へ持っていかれるのでしょう。

「本当にいいの?」
「ええ、私蘭丸君になら…なんでも捧げられます。」
「僕だって。」

私の髪の毛を耳にかけて、くすくすと笑いました。私もつられて笑い、笑い終えると蘭丸君が
首にぎゅっと抱きついてきました。暖かい灯火のような光だけが私たちを照らす中、蘭丸君が
私を押し倒しました。私の目に映るのは、蘭丸君と、天井だけ。

「ねえ、蘭丸君…?」
「なぁに?
「私ね、あなたにならこの世界を任せられるのです。任せても…構いませんか?」
「勿論。僕に任せてよ。のことを思って…戦も勝ってくるから、ね?」

目上に居る蘭丸君に微笑みを向けて、私は蘭丸君に身をゆだねました。

「好き…ですっ、ん、ふ…ぁ…」
「僕もだよ…。」