こを




負けた――――。
初めてロイに一騎打ちで負けた。はがくっと地面に四つんばいになった。
すぐ近くでは勝ち誇った笑みを浮かべたロイが、を見ている。

「どうだ、俺はお前に初めて勝ったぞ!」

ふははははは!と高笑いして、ほらよ、と言う言葉とともに手を差し出された。

(く、悔しい!)
とてつもない敗北感を味わった。ロイは誰よりも好きだけど・・・今は誰よりも憎い!
は眉を寄せつつもロイの手をとった。ぐいっと引っ張られ、立ち上がる。

「じゃあ、俺の言うこと何でも聞くんだったよな?」
「そ、そうだったかもね。」
「そうだったかもじゃなくて、そうなの。それじゃあ言うこと聞いてもらうぞ!」
「出来る範囲だからね!」

仕方ない、約束は約束である。
実は一騎打ちをする前に賭け事をしていた。

”負けたほうは、勝った方の言うことを何でも聞く。”

という多少危ない賭け事で、提案者はロイだ。
提案されたは、今までロイに一騎打ちで負けたことは無かったので、快く了承した。
のだが、ロイは特訓していたようで、結果ギリギリで負けてしまった。
とても恋人同士とは思えない。

「そーだなぁ・・・っていっても、もう決まってるんだけどな。」

にや、と意地悪い笑みを浮かべる。その笑顔にイヤな感じを覚える。
ドキドキとロイの言葉を待つ。いつでもこい!

「新婚ごっこ、しようぜ?」

無邪気な笑みに、拍子抜けして呆然と立ち尽くす。
するとロイが顔を赤くして「何とか言えよ!!」と怒鳴った。
その怒鳴り声にハッ、と我に返り、怒鳴り返す。

「イヤよ!大体、いい年こいて”ごっこ”って何よ、”ごっこ”って!」
「べ、べつにいいだろ!俺が勝ったんだぞ!それに、”ごっこ”舐めんじゃねぇぞ!!」

”俺が勝った”と言われてしまえば黙るしかない。
反論を呑みこみ、「仕方ない・・・」と渋々了承した。
するとロイが満面の笑みを浮かべた。そんな笑顔を浮かべられては断るわけもない。

「じゃあ、期限は明日いっぱいな!」
「えー丸一日?」
「あたりめぇーだろ!なんなら予習しとく?今から」
「遠慮しとく。」
「つれねぇーなぁ」

即答したに唇を尖らせるが、そんなロイをキスで制した。
突然の口付けに急に押し黙ったロイに「ばいばい。」と手を振り逃走した。

それから部屋に戻り、ロイとの約束なんて忘れて眠りについた。



次の日。

「おはよーっす!」

遠慮のかけらもないノック音、というより騒音に起こされた。
ぼんやりと辺りを見ると、朝日が部屋に差し込んでいる。
朝かぁ。ぼんやりと朝を認識して、のんびりとベッドから立ち上がり、服を取り出す。

「寝てんのー?ー!?」

うるせぇ。朝からうるせぇ。
サイアリーズほどではないが、寝起きは悪いは、ロイの声にキレ気味だった。

「起きてるよー。」

と言ったはずなのだが、寝起きと言うせいもあって声が殆どかれた状態でしかでてこなかった。
寝巻きを脱ぎ捨て、着替えだす。

(今日はやけに活気に満ち溢れてるなぁ・・・)

扉の前でそわそわして待っているであろうロイを思い浮かべて、笑みを浮かべた。
なんだろ?今日はどうしたんだろ?着替え終わったは扉へとかけていった。

「おはよー」
「おせぇーよ」
「ごめんごめん。ロイのノック音で起こされたからっ」

多少不機嫌そうな顔だったが、が謝るとすぐに「まあ許してやろう」と笑った。

「じゃ、やろうぜ」
「何を?」

突然の言葉にきょとんと返すと、ロイが眉を寄せる。

「はぁ?忘れたとは言わせねぇーぞ!”新婚ごっこ”するっていっただろ!?」

ここで総てを思い出した。確かにそんな約束をした・・・。
昨日の記憶が急に蘇って顔が青ざめた。そんな約束を、確かに交わした。

「・・・そうだったね」
「よし、じゃあ俺のことは間違っても「あんた」なんて言わないように!」
「――――はい、ロイ。」

今日一日、先が思いやられるなぁ。と重いため息をついた。
でも、ロイとならやってもいいかもしれない。と思う自分もいた。

「なぁ、”おはようあなた”っていってキスしろよ」
「はぁ?ちょっとあんた夢見すぎじゃない?」
「あんたって言うな!とにかく、しろ!」
「はいはい。」

の言葉に顔を赤らめるロイだったが、一向に引く気配は見せない。
諦めたは、困ったような笑顔を浮かべて「仕方ないなぁ」と呟き、自分よりも
背の高いロイに届くように背伸びして、ロイの頬に軽く口付けした。

「おはよ、ダーリン」

上目遣いで、改めての朝の挨拶。ロイはなぜか明後日の方向を見て頬をかく。
つまり、照れているのだ。それが可愛くて、同時に嬉しくて、は微笑みを浮かべた。

「お、お、おはよ・・・ハニー」

顎を固定され、しっかりと唇にキス。
明らかにいつものロイじゃいわないような言葉に、の体温は上昇した。
第三者が聞いたら笑っちゃうような会話だが、二人は真剣そのもので、暫く見つめ合うと、
もう一度ロイのほうから口付けをした。

「んじゃぁよ・・・早速王子んとこいこうぜ!」

甘い雰囲気を拭い払い、ロイが満面の笑みで手首を掴んだ。

「なんで?」
「自慢すんの!」

それを言い捨てると、強引に歩き出した。訳判らないロイに疑問を持ちつつも、
「どうせなら手を繋ごうよ」と提案すると、ロイはあっさりと手を離した。

「それもそうだな。」

手と手を絡めてまた歩き出した。
に歩調をあわせてゆっくりと歩き、他愛ない会話を交わす。
どっちの顔も幸せそうで、本当に新婚のようだった。

軍議の間に行くと、やらルクレティアやらが今後について話し合っていた。
たちに気づくと、パァッと花のような笑顔を浮かべた。

「あ、!おはよっ!」
「おはよー!」
「俺のことは無視かよ・・・。」

普通にロイの存在を無視したに、二人は苦笑いをしたが、そんなことは気にせず
は穏やかな笑顔を浮かべて、の手をとり、ニコニコとしている。

「おい王子さんよぉ、俺の”妻”に何してんだよ。」
「つ・・ま?」

の肩に手を乗せて、どすのきいた声で言うと、はきょとんとする。
慌ててが仲裁に入る。

「ちょ、ロイ!やめてよ!」
「いいじゃん!俺の妻だろ、は!」
「そうだけど・・・そうじゃないじゃん!」
「よくわからないんだけど・・・?」

二人で言い合っている中、王子が不思議そうな顔でいる。
それもそうだろう。二人の約束は二人しか知らない。リオンも不思議そうだ。

「とにかく、と俺は妻と夫の関係なのっ!よろしくな!!」

それだけいうと、の手をとって風のように走り出した。
残されたとリオンは、暫く首をかしげていたが、やがて状況を理解した
顔を青くして「えええええ!?」と悲痛な叫び声をあげた。



「あースッキリしたっ!」
「スッキリじゃないし!ねえ、もしかしてアレを言うためにのとこいったの!?」
「ったりめーよ!ここらへんしっかり伝えておかねーと、うるせぇからな。」
「あほらしー・・・。それに、今日だけじゃない。ねぇ、ダーリン?」
「まあ、そうだけどさ・・・。」

軍議の間から出て、船着場にやってきた二人は、暖かな太陽の光を受けて
暫し黙る。何もいわずに後ろからの事を抱きしめると、「恥かしいよ」との声。
ランとスバルが、二人の様子を見て、何やら囁きあう。

「んじゃーさ、腹も減ったところだし、飯でも食うか。」
「そうだね。」

ロイの一言でご飯を食べることが決まり、船着場から移動し始める。
すると、ランとスバルが駆け寄ってきて、声をかけてきた。

「なぁなぁ!やっぱりロイとって、付き合ってたんだな!」

ランの無邪気な笑顔。とロイはへ?と尋ね返す。

「いやだからさぁ、おめぇらってなーんかさっ!付き合ってる感じしねぇんだもん!」

スバルがランに続く。
はいわれてみれば・・・。と納得するが、ロイが憤慨する。

「んなこたぁーない!いつだって俺はの事を愛してる!って、んぐぅ・・・」

バカみたいにでかい声で叫ぶロイの口を慌ててふさぎ、愛想笑いを浮かべる。
ランとスバルは呆然とロイを見ている。

「ぶはっ!だって、俺のこと愛してるよな?」

ふさいだ手を無理矢理剥がし、に問いかける。
その目は真剣で、曖昧な答えはきっと許されないだろう。
は実は、ロイに「好き」だとか「愛してる」とかいう言葉はいったことはなかった。
きっとこれは、新婚ごっこがどうたらではなく、本心を聞いているのだろう。

「私は・・・」

一呼吸置き、息を吸い込んだ。

「勿論、ロイのこと愛してるに決まってるじゃない。」

にこ、と笑うと、ロイは嬉しそうな笑顔を浮かべつつを抱きしめた。
初めての愛の言葉に、ロイの顔は赤くなっていた。勿論も。

「だよなー。俺たちラブラブだもんなっ」

満足そうなロイ。ランとスバルは二人を見てやれやれといった感じで肩をすくめた。

「じゃあ、行こうぜ。」
「うん、ロイ。」

幸せそうな顔の二人を見て、遠くから見ていたが涙目で悔しがっていたとか。



。はい、あーんってしろ。」
「おじいちゃんじゃないんだから一人で食べられるでしょ」
「だーっ!うっせー!!お前は俺の妻だろ!」
「もー、しょうがないなぁ。」

目立つ行為はしたくなかったのだが、渋々と引き下がりスプーンですくった。

「はい、あーん。」
「あー」

ロイの口の中にそっとスプーンを持っていき、ロイが口を閉じるのと同時にスプーンを抜き取った。
何度も噛んで、「に食べさせてもらうのはうめぇな。」と満足げにいった。

「じゃ、俺からも!」

からスプーンをひったくってニコニコとおかずをすくった。

「いやよ!は、恥かしい・・・」

そういって俯くに、ロイの胸はきゅっと締め付けられた。
(か、可愛い・・・っ)
の可愛らしい一面に、ロイはドキドキだった。と同時に悪い知恵が浮かんできた。

「そんなに俺のこと嫌いなのか・・・。」

しゅん、としおれたように言うロイ。慌てて顔を上げたが「そんなんじゃ!」と抗議した。
その言葉を聞いて、バッと顔を上げる。

「じゃあ、いいよな?な??」
「し、仕方ないなぁ・・・今日だけだよ?」

とうとう折れた。よしっ!と心の中でガッツポーズするロイ。

「それじゃ、あーん。」
「あーん・・・」

目を閉じ、口をあけて俺のスプーンを待つ
艶やかな唇に、白い肌。改めて見てもやっぱりは可愛かった。

(にしても、なんかエロいな・・・)
邪な心を振り払い、スプーンを口に持っていく。

「おいしい・・・」

もぐもぐと食べるが、感想を述べる。
「まぁな!」と作った本人でもないのに誇らしげに胸を張るロイに、は微笑みを浮かべた。

「新婚ごっこも楽しいね。」
「と、いうことは!?明日もやるってことか!?」
「それとこれとは別でしょー?」

くすくすと笑ったに、ロイはぶすっと頬を膨らませた。
















アトガキ
まず最初に、本当にスミマセンでしたΣ(|||▽||| )
意味不明だし、文にまとまりが無いし、描写力に欠けるし、長いし、新婚してねぇーし!Σ(´曲`;)
心の底からすみません。地球に優しくない夢でごめんなさい。
愛だけはつめたつもりです・・・!こんなやつですが仲良くしてやってくださいねっ
(060330)真田亜瑠