心配性、やきもちやき、そんな君




検事って言う仕事は、きっと私が思っている以上に大変なんだと思うの。
私の恋人怜侍君は、まいにちまいにち忙しそうだし。証拠品がどーたら毎日ぶつぶつ呟いてるし。
頭が悪い私はそんなことちっともわかんないから、今日も検事局の怜侍君の部屋でのんびりまったり読書をしてます。
あつーい夏は冷房ガンガンだし、さむーい冬は暖房ガンガンだから、居心地いいよ。でも、外に出ると
本当にしんどい…。身体が冷房とか暖房に慣れちゃってるから、外気はもうむりむり!

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

あ、携帯鳴った。途端、怜侍君に睨まれた。マナーモードにしとけ、って目で言ってる。

うんうんって頷いて、ディスプレイ見ると、なるほど君から電話だっ!わーい、なるほど君だ!
私なるほど君好き!なんか、面白くて。



「もしもーし!」
ちゃん?お久しぶり、なるほどです。』
「お久しぶりなるほど君!真宵ちゃんはお元気?」

なるほど君、って聞いた瞬間怜侍君の手がぴたって止まったのを私はしっかり目撃しちゃった。
怜侍君はね、実は独占欲が強いんだ。だから、私の口からおとこのひとの名前が出るたびああやって反応するの。
見てて面白いからついついからかっちゃうんだ。でもね、反応するだけで何も言ってこないの。
あれって、男のプライドなのかな?

「元気だよ。ちゃんに会いたがってるんだけど、今夜一緒にラーメン屋いかないかい?」
「わー!私も会いたいなあ!」

真宵ちゃん真宵ちゃん!
もう何日も会ってないなあ…。最近法廷に行かないから、ご無沙汰。会いに行こうかな?
なーんて考えてたら怜侍君ががたって大きな音を鳴らして席を立って、つかつかと私のとこにきた。
突然のことに呆然としてると、怜侍君は私の携帯をひったくって、ぽちってなんかのボタン押した。
そんで、携帯をぽいってこっちによこして。すたすた席についた。私は急いでもしもし!って携帯を耳に当てて言うけど、
ツーツーツーって言う音が鳴り響いてるだけだった。つまりこういうことでしょう、怜侍君は私の携帯を勝手に切った!

「なんで切るのよ!」

眉を寄せて怜侍君に怒鳴ると、私のよりも不機嫌な顔をした怜侍君が証拠品のファイルを片手に持ちながら

がいけない」

なんていい始めた!このー!御剣怜侍め!!!

「なにがよ!?なるほど君が吃驚したじゃない!」
「なにが成歩堂だ!私という男がいながら…」
「なるほど君と電話もしちゃいけないの!?」
「そうじゃない!」
「じゃあ、なに!?」

ひどいひどいひどい!いつもならなるほど君と電話してたって怒んないくせして。
怜侍君最低!謝ってもらわないと!そんで、31のアイスおごってもらわないと気がすまないよ!

「先ほど、成歩堂に会いたいと言ってたではないか!」
「…ほえ?言ってないよ!」
「いや、言った!」
「言ってないってば!」

と、私が叫んだ瞬間先ほど自分が言った言葉がフラッシュバックしてきた。確か…私も会いたいなあ!って言った気が。
でも、それは真宵ちゃんに対してだった気も。あ!わかった、怜侍君は会話の内容を聞いてないから勘違いしてるんだ。
…ぷ。怜侍君はそれを知らないからこんなにはげしく嫉妬してるんだ。妙に笑いがこみ上げてきます。ぷぷぷ。

「ふふふ…」
「な、なにがおかしいのだ?」
「怜侍君、勘違いしてるよ?会いたいっていったのは、真宵ちゃんに対してだよ。」

怜侍君も、あほだなあ…。天才検事のくせして、恋愛に関してはあほなんだから。
でもね、でもね、そういうとこも好きなんだ。

「私が好きな人は、御剣怜侍君。」

にこって微笑むと、怜侍君は顔を赤くして、「う、うム…。」って俯いた。意外と照れ屋さんなんだよ。

「私は…いや、私も君が好きだ。。」
「証拠品の提示を求めたいです!」
「…。」

試すような視線を向けると、怜侍君はおもむろに立ち上がり、私の座るソファへやってくると、
片ヒザをついて、私の頭を固定して、端正な顔を近づけてきた。キスしちゃう2秒前。
触れるだけのキスをして、怜侍君は顔を離して、「いかがかな?」って不敵な笑顔を浮かべちゃってる。
それよりも、怜侍君顔近いよっ!いやん、照れちゃうじゃん!

「うーん…えっと…証拠不十分、かな?」
「ほほう。なら、もっと提示して見せよう。」
「う、え、お、へ?」

怜侍君が私に押し倒して、覆いかぶさってきて、天井が見えるはずなのに、そこには怜侍君のきれいなお顔があって
私の心臓は痛いぐらいどきどきしてて、室内温度が上昇してる。(本当は、室内温度じゃなくて、私のほうだけどね!)
もしかしてもしかして、ここで?ここでなの!?怜侍君、別にいいんだけどね!いいんだけどね、でもね、もしかしたら
誰かはいってくるかもしれないしさ、うう、で、でも証拠提示求めたの私だしなあ…でもこんなことになるなんて思って
なかったし!怜侍君真昼間だよ!窓から青空見えるんだよ!雲ひとつない晴天だよ!れいじく

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

突如テーブルに置いてあった私の携帯が鳴り出した。この着信音は電話だ。不謹慎ながら私が手を伸ばして
携帯をとり、開くと、ディスプレイに表示された「なるほど君」の文字…。

「もしもし?」
ちゃん?ラーメン屋やだった?』
「はう!ち、違うの!怜侍君がね、電話切っちゃってね、それで」
「御剣だが、こちらは今取り込み中だ。後ほどかけなおす、それじゃあ。」

またまた私の手から携帯をひったくった怜侍君が、勝手にぺちゃくちゃ喋ってる。
れ、怜侍君め…!

「ばかーっ!あたしは真宵ちゃんとラーメン食べに行くの!退いてよね!」

覆いかぶさってた怜侍君をぐいって押し返して、携帯を取り戻し、怜侍君の部屋を出た。
!って私を呼ぶ声が聞こえるけど、無視無視。ばかの、ばかによる、ばかさわぎね!(冥ちゃんの真似)


結局、私はその夜、なるほど君、真宵ちゃんと一緒にラーメンを食べに行ったよ。
帰宅した後は絶句しました。鍵が開いてて、電気がついてて、泥棒さんが入ったのかと思ったら…
なんと、怜侍君がソファに足を組んで座ってたの!張り詰めてた気持ちが一気に開放されて、
「びっくりしたじゃない!」って怒鳴ったら、怜侍君が例の不敵な笑みを浮かべて「証拠品を提示しにきた。」
って言って私を寝室に運んだ。長い夜の始まりでした。