確かなもの




待つ身はとても辛い。愛しい人が戦場で戦ってるのに、自分は待つことしか出来ない。
でも彼は強い。負けるわけなんてない…日本一の兵だから。
信じてる、信じているけど怖い。不安ばかりがを襲う。何が起こるかわからない戦場。

「幸村…。」

少し離れるだけでもすぐに逢いたくなるのに。
生きるか死ぬかの戦場へ彼は行ってしまった。もうどれぐらい経ったのかもわからない。
時間の流れがとても遅く感じる。

周りには同様恋人、婚約者の帰りを待つ女子供がいる。
皆、顔には拭いきれない不安が残っていた。やはり皆、信じてはいるけれど不安なのだ。
この世界に確証のあることなんてない。確かなものなんて、ありはしないのだ。
彼の愛情だって、いつかは不確かなものになってしまうかもしれない。

「帰ってきた!」

何処の誰かは知らないが、やけに甲高い声で誰かが叫んだ。
は俯きかけていた顔を弾かれたようにあげると、遠くに武田の紋が見えた。
帰ってきた。その瞬間、安堵のため息をつく。だが、まだ安心していられなかった。
武田軍は帰ってきたが、真田幸村の生存はまだ未確認だ。
は居ても立ってもいれず、思わず駆け出した。
どれだけ走っても一向に近づけないが、遠くから一騎がこちらへ猛スピードでやってくるのが判る。
馬に乗っている男は、全身真っ赤。やけに長いハチマキをたなびかせ、何かを叫んでいる。

「幸村ー!」
ー!!!!!!!」

男は間違いなく真田幸村。戦へ行く前と同じで、元気すぎるほどの元気だった。
やがて二人は再開を果たした。幸村は馬から飛び降り、急いでのもとへ駆け寄り抱きしめた。
きつすぎる抱擁に、思わずの口から「うぐ、」と声が漏れたが、幸村は気づいていない。
不意に幸村から血の匂いがした。その瞬間少し悲しくなったが、幸村が生きているが第一だった。

!!逢いたかった…のために頑張ったでござるよ?」
「ありがと…。私も逢いたかった。生きててよかった…さすがは日本一の兵。」
に逢うためならこの幸村、鬼にも魔王にもなる!」

やがて二人は離れ、馬に乗り、沢山に追い越されながらゆっくりと城へと向かった。
は幸村の前。落ちないように幸村が抱きしめるように後ろから腕を回した。
ごつごつとした鎧だけど、確かに感じる幸村の存在。これは、確かなもの…。
でもいつかはなくなってしまう、不確かなものでもある。
急激に悲しみが襲ってきた。いつかは死んでしまう。日本一の兵も。そして自身も。

「幸村…」
「ん?」
「この世に確かなものって、あるのかな?」
「確かな…もの?」

不思議そうに幸村が呟く。

「うん。たとえば、今幸村は生きてる。確かなものだけど、いつかは死んでしまうでしょ?
 だから、不確かなもの。私も、父上も、不確かなもの。この世に、確かなものはある?」
「ん〜。難しいことは判らないが、俺のへの想いは、確かなものだ。」
「わからないよ。そんなの…」
「わかるさ」

やけに自信たっぷりに言う幸村に、は心が満たされるのを感じた。

「…そんなこといって、あとになってやっぱりなしなんて言ってもきかないからね!」
「なら結婚するしかないな。」

は?

「な、なにをいきなり!?」
「俺の気持ちは確かなものだって証明する。…嫌でござるか?」
「嫌なわけないよ!わ、私でいいなら…」
じゃなきゃ駄目でござる。」

確かなもの…
あるのかもしれない。
確かなもの、二人なら作り上げれるかもしれない。
信じてみよう。信じることから始まる気がする。

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リハビリ^^;
いやあ文かくって難しいね