ほら、その笑顔。ほら、その仕草。全部全部愛しい。ああ、何て可愛いんだろう。
君が僕のものだったらどんなに素敵なことだろうか。すぐそばにいるのに触れられない。
すぐそばにいるのにこの手は届かない。なんてもどかしいことだろうか。





僕では届きませんかあなたには触れられませんか





今日は久々に王子のカッコをして外を歩いた。すると人々は俺を見て、王子様!と
笑いかけてくる。俺のときにはない反応だな、まあ流石は王子ってところか。
いまのところ俺の正体に気づいた奴は居ない。やっぱり似てるんだな、と改めて感じる。
でもリオンの奴はいっつもいっつも俺の正体を見破るんだ。つまんねぇよな。
王子さんの叔母のサイアリーズだって時々だまされんのに。アイツの王子さんへの想いは計り知れないな。

そうだ、アイツも俺のことをすぐ見破るんだ。王子さんの婚約者の、
あの子・・・すんごい可愛いんだよ。生まれて初めて一目惚れってのしたぜ。
王子さんたちと一緒に山賊の俺に会いにきたとき、王子さんよりも先に目が行った。
それぐらい俺には魅力的に見えた。可愛くて可愛くて、思わず顔が赤くなった。

「あれ、ロイ君?」

俺がのことを考えていると、幻聴か、の声が聞こえてきた。
ゆっくり振り返る。高鳴る胸、これはもしや・・・?

!?」
「こんにちはロイ君、珍しいね。の服着てるなんて。」

ふんわりと優しい笑顔この笑顔に、俺は癒される。そして何とも言えない感情がこみ上げてくる。
いつも思う。この笑顔が俺だけのものだったら、って。俺のほうがもっと早くと会ってたら
もしかしたら、俺のことを好きになってたかもしれない。そう思うと、なんだか、なぁ。

「なあ。」
「なぁに?」
「王子さんのこと、好きか?」
「えー、どうしたの急に?」

照れ笑いを浮かべて髪を耳にかけたの。その仕草とか、全部が美しい。
これ、王子のものなんだろ?ものっていうのは、すっごい失礼だろうけど。
なんで同じ様な顔してるのに、違うんだろうな。王子さんは俺のないもの全部持ってる。
このことを言ったら、王子さんは「ロイは僕の持ってないものを沢山持っているよね。」と笑った。
そんなことない、王子さんにないものなんて、ないんだからな。

「好き、だよ。」
「・・・そっか。」

はにかみ笑顔が眩しい今日この頃。ゆるぎない愛に、俺は負けちゃってる。
頑張って、王子さんからを奪い去りたいけどね。あいにくそんなことは無理なんだろうね。

「でも、ロイ君の事も好きだよ。」

初めてみるいつもと違う笑顔。の不意打ちに、俺は顔が真っ赤になった。
これはきっと、王子さんには向けない笑顔だ。と信じたい。俺の顔の赤さを見て
心配そうな顔になる。

「どうしたの、ロイ君?」
「あ、いやなんでもない!」

ごまかすように笑い、じゃあな!とその場を立ち去った。このままだと、いつか鼻血を出す。
今のままでは届かない、君へ。だから俺は精一杯の努力をして、いつか君に触れるんだ。
待ってろ。今度王子さんに宣戦布告するから。
















(VS王子!いざ勝負!)