『好き』の理由




「幸村様ー?」
「おお、殿!如何したでござる??」
「あ、いらしましたか。お団子でもお食べになりませんか?とお誘いに参りました。」

団子を見せるなり、嬉しそうに目を細めた幸村様を見て、私は少し微笑みました。
可愛いですね、とは言わずに、代わりに「縁側へ行きましょう。」と提案しました。

殿の作られたお団子…!まことおいしゅうござりまする!」
「まあ、本当ですか?それじゃああとでお義父様にも差し入れしようと思います。」
「おお!それはいい考えでござるな。」

本当に美味しそうに団子を頬張る幸村様を見て、私の顔はほころびました。
始めて作ったんで自信がありませんでしたが、幸村様を見て自信が出てきました。

「美味しかったでござる。こんな美味な団子は他にござらんよ!」
「まあ…本当ですか?嬉しいですわ。団子屋でも始めましょうか。」
「むう、それは嫌でござる。まことに勝手なことを言えば、殿の団子はそれがしだけが食べていたい。」

思わず私は顔が赤くなりました。そんなこと思ってたなんて、と多少びっくりもしました。
私は幸村様の肩に凭れかかってみました。一瞬ビクリと震えましたが、幸村様の
大きな手が私の肩を掴んで寄せてくれました。幸村様の手が暖かくて、私の気持ちも暖かくなりました。

「あ…ひ、め…姫、どうしたでござるか?」
「なんでもありませんわ。…そうだ。幸村様、幸村様。幸村様はの何処がすきなのですか?」
「へぁ!?いいいいきなり何を!?」
「ふふっ、ちょっと気になりましたので。」

ちら、と見上げると、幸村様が顔を真っ赤にして空を仰いでいました。
もしかしたら、本当に考えてくれているのでしょうか?だとしたら、嬉しいです。

「…あのでござるな。」
「はい」
「それがしが殿を好きな理由は…ないでござる。」
「と、いいますと?」
「好きだから好き、でござるよ。」

好きだから好き、確かにそれが一番なのかもしれません。
幸村様は、時々びっくりするような言葉を私に下さるので、驚きです。

殿は…それがしの何処がいいのでござるか?」
「幸村様の言葉を引用してよろしいのなら、好きだから好き。なんですよ。」
「…それがしのことを好いてくれありがたいでござる。殿…。耳を貸して欲しいでござる」
「はい、どうぞ。」

幸村様の手が肩から離れると、私は肩から離れ、耳に髪をかけて準備しました。

「好き、でござる。」
「…っ、ゆき…むらさま、不意打ちでございますっ」
「たまには…自分の気持ちを伝えないとなんだかもやもやするでござるよ」

照れ笑いを浮かべながら、顔を真っ赤に染めた幸村様が言いました。
突然大胆になる幸村様には、本当に驚かされます。
今の言葉は、心臓が飛び出そうになりました。胸を押さえて、「幸村様…。」と名を呼びます。

「なんでござろう?」
「好きですわ。誰よりも。」

そういって、自ら口付けに向かいました。幸村様の頬に口付けをし、ちゅ、と音を立てて離しました。
幸村様は今まで見たことないくらい赤くなり、そのまま後ろに倒れました。

「幸村様!?」
「は、反則でござるよお…。」
「誰か〜幸村様が倒れましたぁ!」